SOLUTION
検査室支援情報
検査の樹 -復習から明日の芽を-
13-1. いまさら、でも大切な『遺伝子検査』の基礎をふり返る(PCR)
遺伝子検査に従事していると、突如として理解に苦しむ結果に遭遇したり、操作上の誤りはないのに結果が出ない、新たなPCR検査の体系を構築したが意図する結果が出ない等々の経験をお持ちの方は多いのではないだろうか。このような事例に遭遇したとき、指導者が身近に居る場合は問題ないが、独学で取り組む方には、個別事例での問題解決への情報入手の機会は意外にも少ないのではないだろうか。
今回は、前稿『Vol.12 これからPCR検査を始めたい方への基礎知識』の続編として、すでに遺伝子検査の経験をお持ちの方で次の展開を模索したい方、もしくは経験をベースに再度PCR増幅検査を学びたいという方への一助になればとPCRの基礎知識の一端を集約した。なお、本稿の執筆では、PCRを詳細に解説した総説「Lorenz TC;J Vis Exp. 2012 May 22;(63):e3998」をベースに、文献や調査資料、筆者の経験などを加筆し構成した。
PCRは、微量の鋳型DNA(テンプレートDNA)または標的配列を増幅し、DNAの特定セグメント(アンプリコン)を目的量まで増幅できる技術である。PCRの増幅理論は、比較的簡易で技術的にも確立された方法のため、通常はさほど問題なく進行するが、反応が適正化条件から大きく逸脱した場合には、時として偽りの結果を生みかねない落とし穴もある。
PCR実験のトラブルは、ルーチンワーク中に発生した場合と新規の分析条件下で発生した場合に分かれ、その内容は大きく異なる。本稿では後者を中心に展開する。PCR実験で生じる失敗の具体的事例としては、意図するPCR産物とサイズの異なる非特異的なDNA産物の出現、アガロースゲル電気泳動上でのラダーやスメアの出現および増幅産物が全く無いなどの現象が挙げられる。さらに、意図する産物は出現せず、サイズの異なる非特異的産物が出現するなど、多くの現象がある。また、別の問題として、突然変異がアンプリコンに導入されたPCR産物の異種集団を生じることがある(図1)。
図1 悩むPCR実験のトラブル
PCR実験で生じたトラブルの原因が予測できる場合は、比較的容易に解決できるが、予測困難な事例では、解決に時間を要することが多い。このような事例ではまず原点に戻り、基本原理を熟慮した上で、トラブルシューティング集などを参照することが、解決への糸口をつかむ早道となる。トラブルの原因究明には、鋳型DNA、標的gene、PCRプロトコルおよびPCR試薬と、各々系統別に群別して考察すると的が絞りやすい。本稿でもPCRの基本知識の整理、増幅の方法論および反応の最適化と、可能な限り分別して記述した。
1:遺伝子増幅検査の留意点、鋳型DNAへの認識
遺伝子増幅は、多くの遺伝子検査に用いられる基本的な技術であり、遺伝子増幅にはそのベースとなる鋳型DNAは不可欠であり、鋳型DNAが無ければ増幅できない。さらに、鋳型DNAが存在しても、標的領域に切断や異常な高次構造形成などがあり、反応できない状態であれば陰性と評価されることもある。このように遺伝子増幅検査において、鋳型DNAの特性や、増幅試薬などの適正化および増幅阻害成分の混在などは、結果を大きく左右する重要な因子である。当然ながら、鋳型DNAが反応できない状態を解錠することは重要であるが、生じた現象に対し充分な理解と知識を持たなければ解決は困難である。
鋳型DNAが反応できない状態の例としては、増幅反応の標的遺伝子全体に関わるものとして、増幅反応試薬のMg2+などの塩濃度の不適とプライマーアニーリング温度の不適、およびGCリッチ遺伝子など鋳型DNAの標的領域に特有な変性温度や変性剤濃度の組み合わせに伴う一本鎖乖離の障害がある。
個別の試料においても、抽出・精製過程での鋳型DNAの標的領域内での切断や試料中に混在するPCR阻害剤およびそれらの含有量など、さまざまな課題が潜む。従って、遺伝子増幅検査の評価には、適正な内部コントロールが不可欠である。
このように、遺伝子抽出・精製の操作は、遺伝子増幅検査において最も重要な作業にもかかわらず、ややもすれば簡易・迅速化が先行して求められ、その質的評価は検証不足の感も歪めない。従って、一系統の遺伝子増幅検査で問題が生じなかったから別系統の遺伝子検査も同様に問題がないとは限らない。同じ標的遺伝子でも、標的領域が違えば塩基構成比率や塩基構成分布が異なる遺伝子は多々あることを常に念頭におくべきである。
PCR阻害剤は、PCRによる核酸増幅を阻害する因子である。技術・試薬・機器類の反応系には不都合無く、また、検出に充分量の鋳型DNAが存在する試料にもかかわらず、増幅の低下や増幅抑制現象が認められるときは、阻害剤の存在を疑う。しかし、強い阻害作用が生じた場合は気づきやすいが、阻害作用が弱い場合は対照実験との検証がない限り気づき難い。さらに、これらは同系統の試料間でも個々の試料ごとに含有物や含有量および影響の度合いが異なるため厄介である。
PCR阻害剤の作業行程別によるアタックポイントの概略を図2に示した。DNAとの相互作用もしくはDNAポリメラーゼへの干渉などにより増幅反応に影響する。阻害剤は何らかの形態でDNAと直接結合し、DNA精製操作を通過する。別の例としては、DNA精製に使用した試薬成分が微量残存し増幅阻害を示すこともある。さらには、精製DNAの溶解保存液もしくはプライマー溶解に使用するTEなども、増幅反応管への添加量によっては補因子(Mg2+など)利用性の低減、またはDNAポリメラーゼとの相互作用を妨げる増幅阻害を生じる。
図2 サンプル調製およびPCR中のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)阻害物のアタックポイントの概略
C. Schrader et al. Journal of Applied Microbiology 113, 1014—1026 を改変
特にマルチプレックスPCRでは、単一チューブ内で複数の標的配列を増幅するための複数セットのプライマーを加え、合理的に増幅するため、標的配列が異なれば当然阻害の度合いも異なる可能性が高まることを充分に考慮すべきである。
2:PCR増幅検査の基礎的要点
1 プライマーの設計
PCRに限らず遺伝子検査ではプライマーの設計は最も重要な作業であり、プライマーの出来いかんによりその後の実験の成果は大きく影響を受ける。PCRではforward primer(antisense strandとアニール)、reverse primer(sense strandとアニール)の一対のプライマーを使用する。DNAポリメラーゼは、プライマーの3’末端から3’方向へと生合成を展開する。プライマーに起因する一般的な課題としては、
- プライマーが自己アニーリングによりヘアピンループなど二次構造を形成する。
- 互いのプライマーがプライマーアニーリングする。
- 一対のプライマーの融解温度(Tm)が大きく異なり、二つのプライマーが標的配列に効率的に結合するアニーリング温度の設定が困難である。
などが挙げられる。
上記問題を解決するためのプライマー設計に際し考慮すべき一般的事項としては、
- プライマーの長さは15~30ヌクレオチド残基(塩基)とする。
- 最適なGC含量は40~60%の範囲とする。
- プライマーの3’末端は、プライマーをクランプし、末端の「ゆらぎ」を防ぎプライミング効率を高めるために、GまたはCが望ましい。DNAの「ゆらぎ」は、末端がアニーリングされないほつれや分離により起こる。GC対の3つの水素結合は「ゆらぎ」防止には有用であるが、プライマーのTm値が高くなる。
- 一対のforward、reverse primerの3’末端は、相補的であってはならないと同時に、単一プライマーの3’末端がプライマー中の他の配列と分子内もしくは分子間の相補的配列を持つプライマーは避ける。これらは、プライマーダイマーおよびヘアピンループの二次構造を形成する。二次構造の分子内領域は、鋳型へのプライマーアニーリングを妨害し、PCR本来の反応を減衰させるため注意すべきである。
- プライマーの最適融解温度(Tm)は52~58℃であるが、設計が困難な場合は45~65℃に拡大してもよい。一対のプライマーのTm値の差異は5℃以内とする。
- 二塩基ヌクレオチド反復(例えば、GCGCGCGCGCまたはATATATATAT)または一塩基配列(例えば、AAAAAまたはCCCCC)は避けるべきである。DNAのプライミングされた部分または形成するヘアピンループ構造に沿って滑りを生じることがあるためであり、DNAテンプレートの配列上から回避できない場合は、リピートまたは1塩基繰返しは最大4塩基とする。
- 非特異的なプライマーアニーリングを最小限に抑えるために、プライマーの3’末端付近の3つのGまたはC残基を避ける。
- プライマーには、以後の展開実験に応じ制限酵素部位などの有用な配列を含むように5’末端に設計ができる。例えば、PCR産物のその後のクローニングを容易にするため制限酵素部位をPCRプライマーの5’末端に配置する、もしくはT7 RNAポリメラーゼプロモーターを添加して、PCR産物をサブクローニングなくin vitro転写を可能にできる。
がある。(1~6:Lorenz TC;J Vis Exp. 2012 May 22;(63):e3998より引用)
プライマー対の設計をサポートするコンピュータプログラムとしてはいくつかあるが、以下に代表的な2つを示した。
『Primer design tool』(NCBI:米国生物工学情報センター)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/tools/primer-blast/
『Primer3』(Whitehead Institute for Biomedical Research)
http://frodo.wi.mit.edu/primer3/
設計したプライマーは、偽遺伝子(Pseudogene)または相同体の増幅を回避するために、プライマーをBLASTサーチして標的の特異性を確認する。
2 PCR増幅産物の検出と遺伝子増幅の基本的事項
SYBRグリーン™法もしくは蛍光ブローブ法などの増幅産物を検出する機器を用いるPCR以外では、通常、増幅産物はアガロースゲル電気泳動したゲルをエチジウムブロマイドなどでDNAを染色し、バンドをUV照射器で視覚化して検出する。もちろん、自動機器によるPCRでもこの視覚化による増幅産物の分析は大切である。
当然、正確な分析には明瞭かつきれいなバンド像で、さらに高感度な検出およびバンドのシャープな分離技術の鍛錬など、電気泳動に伴う解析に必要な基本技術は必須といえる。不明瞭なバンド像からは正確な解析結果は見えてこない。近年では、客観的評価を目的とするキャピラリー電気泳動装置も普及している。
このような可視化の染色に使用されるエチジウムブロマイドは、核酸の最も一般的な蛍光染色剤であるが変異原性が指摘されており、他にもいくつかの安全性や低毒性をうたった染料が市販されている。代替染料としては、ナイルブルーA 、peqGreen、Methylene Blue、Crystal Violet, SYBR® Safe, Gel RedおよびNancy-520などがある。エチジウムブロマイドはUV励起により蛍光を発するため、増幅産物の検出のみを目的とする場合は問題ないが、検出したバンドを以降の実験に供する場合は、DNAがチミンダイマーを生じる欠点がある。
一方、代替染料はUV光以外の可視光で検出するため、作業上からも安全性が高いといえる。また、エチジウムブロマイドは廃液処理上の課題も残る。水性廃液中のエチジウムブロマイドは、処分量を最小化するためにろ過媒体上に濃縮した後、焼却処分するのが適切である。また、時として見受けられるが、廃液を漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)で処理するのは止めるべきである。これは、廃棄物量を増加させると同時に、処理産生物は突然変異誘発物質だからである。
通常PCR実験では、試料としての鋳型DNAの添加量は抽出DNAの濃度もしくは容積量いずれかを固定する。これは、試料が細菌ゲノムやヒトゲノム群などに限定している場合は許容できるが、デジタルPCRやリアルタイムPCRなどの定量PCRもしくは極微量鋳型DNAを評価する場合には、コピー数の認識が極めて重要となる。すなわち、同濃度の鋳型DNAでも細菌ゲノムとプラスミドではコピー数は極端に異なる。PCRでは、結果としてDNA濃度の増量が得られるが、増幅はコピー数の複製であり濃度の複製ではない。計算上の二本鎖DNAの全コピー数は、PCRではDNAのコピー数を用いて反応あたりの鋳型量を決定するため、以下の式で表される。
DNA のコピー数=(DNA量(ng)×6.022×1023)/(DNAの長さ×1×109ng / mL×650ダルトン)
以下のサイトでは、DNA コピー数の計算を提供してくれる。
『Copy number calculator for realtime PCR』(SciencePrimer.com)
http://scienceprimer.com/copy-number-calculator-for-realtime-pcr
『Calculator for determining the number of copies of a template』
(URI Genomics & Sequencing Center)
http://cels.uri.edu/gsc/cndna.html
PCRにおける偽陽性としては、アガロースゲル電気泳動像に意図しないバンドが出現する非特異的増幅、ターゲットと混入したアンプリコン(場合によっては鋳型DNA)の両方が増幅する、もしくは陰性試料が陽性となるキャリーオーバーやクロスコンタミネーションによる増幅産物などがある。対策としては、非特異的増幅の場合はPCR増幅条件の適正化、および高感度視的検出の確立や反応系にネガティブコントロールを加えるなどがある。
また、キャリーオーバーやクロスコンタミネーション対策としては、『Chapter 2 PCRの一般的なガイドライン』(ロシュ・ダイアグノスティックス社)に詳細な予防策が記述されているので参照されたい。これとは逆に偽陰性が生じるケースとしては、反応抑制剤の混入や試料に混在した成分による増幅反応の抑制などが考えられる。まれなケースとして、鋳型DNAの切断やタンパク質分解酵素の混入によるDNAポリメラーゼの分解などがある。
PCRでは、サーマルサイクラーによる温度制御とステップ間の移行時間は反応成果に大きく影響する重要な因子である。機器の性能を充分に発揮させるには、ウェルに密着する適切な形状のチューブを選択し、熱伝導性を高めると同時に機器の特性を熟知しておくことも大切である。
3 熱安定性DNAポリメラーゼ
増幅反応における熱安定性DNAポリメラーゼは、Taq DNAポリメラーゼが開発当初から今日まで主流をなしてきた。これまで、新しいPCR酵素の発見や反応液のバッファーおよび添加物などの組成の改変など諸種の改良と創出が加えられ、PCR試薬は短期間のうちに飛躍的な進展を遂げてきた。熱安定性DNAポリメラーゼには、特異性、耐熱性、フィデリティ(忠実度)、処理能力の4つの特性が求められるが酵素間で若干の差異を伴う。このため、最適な酵素および反応系の選択は、目的に合致したアンプリコン産物を得るためには必然的要素であり、さらに個々の熱安定性DNAポリメラーゼの特質を熟知した上で適正な条件下で実験を行えば、目的に合致した遺伝子増幅を達成するのは意外に容易かもしれない。
例えば、PCR産物の3’末端へのプロセッシング性、またはアデニン残基の付加を望む場合は、 Taq DNAポリメラーゼを使用する方がPfu DNAポリメラーゼを使用するよりも望ましい。3’アデニンの負荷は、TAベクターへクローニングする有用な手段である。反面、忠実度を求める実験では、Pfuのような忠実度の高い酵素を選択すべきである。各メーカーとも特殊なニーズに対応できるように、複数の酵素を組み合わせ、反応系の特性を改変したDNAポリメラーゼキットの機能性を高めた試薬系を取り揃えている。
また、忠実度、歩留まり、速度、最適標的の長さ、およびGCリッチ増幅またはホットスタートPCRなどの特徴を列挙したDNAポリメラーゼを選択するための一覧表やカタログ情報を検索して、目的条件と標的領域との特性をふまえて選択するとよい。近年では、個々に異なる特性に対応するために、これまで課題であった、忠実度、反応速度、最適標的の長さ、GCリッチ領域の増幅等々に対し、一気に対応できる酵素試薬キットも市販されているので、最新カタログに目を通す作業も重要である。
以下に、これまでPCR用酵素として用いられている、いくつかの一般的な耐熱性DNAポリメラーゼの特性をメーカーカタログより抜粋列記した。
- Taq DNAポリメラーゼ(ロシュ・ダイアグノスティックス社)
Taq DNAポリメラーゼは熱安定性細菌Thermus aquaticus由来で、PCRに用いられる熱安定性DNAポリメラーゼとして最もポピュラーかつ基本的な酵素である。 Taq DNAポリメラーゼは、最高95℃までの温度で長時間のインキュベーションにおいても安定し、有意な活性消失はない。
「Taqポリメラーゼの至適温度は75~80℃と言われており、半減期は92.5℃で2時間、95℃で40分、97.5℃で9分である。」(Wikipedia「Taqポリメラーゼ」より引用) - Pfu DNAポリメラーゼ(Bioneer社)
超好熱性の古細菌、Pyrococcus furiosus、に由来する Pfu DNAポリメラーゼは他の熱安定性ポリメラーゼと比べて、優れた熱安定性とプルーフリーディング性質を備える。Pfu DNAポリメラーゼは、3’→5’エキソヌクレアーゼ(Proof-reading 活性)を持ち、増幅産物の末端は平滑末端(blunt end)になる。Pfu DNA ポリメラーゼは、ハイフィデリティDNA合成が必要な実験に用いる。表1にFidelity Assayを用いた熱安定性DNA ポリメラーゼの比較を示した。
表1 lacIOZαに基づくFidelity Assaya)を用いた熱安定性DNA Polymeraseの比較
熱耐性DNA polymerase エラー率b) 突然変異した1kb PCR産物の
パーセンテージ(%)c)PfuUltra high-fidelity DNA polymerase 4.3×10-7 0.9 PfuTurbo DNA polymerase 1.3×10-6 2.6 Pfu DNA polymerase 1.3×10-6 2.6 Tgo DNA polymerase 2.1×10-6 4.3 Deep VentR® DNA polymerase 2.7×10-6 5.4 VentR® DNA polymerase 2.8×10-6 5.6 PLATINUM® Pfx 3.5×10-6 5.6 KOD DNA polymerase 3.5×10-6 5.6 Taq DNA polymerase 8.0×10-6 16.0 a) 忠実度は、lacI標的遺伝子に基づく公表されたPCR順方向変異アッセイを用いて測定した。
b) エラー率は、複製当たりの塩基対当たりの突然変異頻度に等しい。
c) 20の有効サイクル(220倍または106倍増幅)の1kb標的配列の増幅後の突然変異したPCR産物のパーセンテージ。
PfuUltra High-Fidelity DNA Polymerase Instruction Manual, TABLE1(アジレント・テクノロジー社)を改変
(PDF)http://hpst.cz/sites/default/files/attachments/pfuultra-high-fidelity-dna-polymerase.pdf - KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡社)
鹿児島県小宝島の硫気孔より単離された超好熱始原菌Thermococcus kodakaraensis KOD1株由来の高正確性PCR 用酵素である。強い3’→5’エキソヌクレアーゼ活性(Proof-reading 活性)を有しており、Taq DNAポリメラーゼの約50倍の正確性を示す。伸長反応は1kb/30秒で、Taq DNAポリメラーゼの約2倍、Pfu DNAポリメラーゼの約6倍の合成速度を示す。Taq DNA ポリメラーゼよりも耐熱性に優れ、100℃で1時間の熱処理後も約70%の活性を維持している。熱変性ステップの温度を高く設定でき、GCリッチな鋳型など特異的高次構造をとる標的に有用である。KOD DNAポリメラーゼは強いProof-reading 活性を有し、増幅産物の末端は平滑末端(blunt end)になる。 - Tth DNAポリメラーゼ(ロシュ・ダイアグノスティックス社)
好熱性真正細菌Thermus thermophiles HB8から単離され、非特異DNaseおよびRNaseフリーに精製。本酵素は高度に調製された5’→3’DNAポリメラーゼで、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を欠如し、酵素はpH約9(25℃で調製)および約75℃の条件下で最大の活性を示す。Tth DNAポリメラーゼは高温(95℃)の条件下、長時間のインキュベーションにおいても安定である。Tth DNAポリメラーゼは、マグネシウムイオン存在下で非常に高い逆転写酵素(RT)活性を示す酵素として発見された。 - Tgo DNAポリメラーゼ(ロシュ・ダイアグノスティックス社)
耐熱性古細菌であるThermococcus gorgonariusから分離され、組み換え酵素として供給されている。この酵素は、他のプルーフリーディング活性を持つポリメラーゼと比べて、明瞭な優位点を持ち、核酸配列をより正確に増幅する(高い忠実度)。平均より高い3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を持つ、高性能の5’→3’DNAポリメラーゼである。この組み合わせにより、Taq DNAポリメラーゼや他のプルーフリーディング活性を持つ市販酵素より、高い信頼性でDNA合成が可能である。また、3kbまでのフラグメントを至適化することなく特異的に増幅可能と説明されている。
4 鋳型DNA(テンプレートDNA)の品質
テンプレートDNAの量および品質は、PCR実験の増幅を成功させるための重要な因子の一つである。一般的に核酸の抽出・精製に使用する試薬類(塩、グアニジン、プロテアーゼ、有機溶媒およびSDS)には、DNAポリメラーゼの強力な不活性化剤となるものが多い。例えば、SDSは(0.01%では90%、0.1%では99.9%の阻害)Taq DNAポリメラーゼを強く阻害する(Konatら、1994)。PCR阻害剤の例としては、フェノール(KatcherおよびSchwartz、1994)、ヘパリン(Beutlerら、1990; Holodniyら、1991)、キシレンシアノール、ブロモフェノールブルー(Hoppeら、1992)、植物多糖類(Adams、1992)、ポリアミンスペルミンとスペルミジン(Ahokas and Erkkila、1993)などがある。
阻害剤の中には、核酸テンプレートとの反応とは関係なく発生するものもある。例えば、容器として使用されるポリスチレンまたはポリプロピレンは紫外線に暴露されると阻害物質を放出する(Paoら、1993; Linquistら、1998)といわれる。
鋳型DNAが阻害剤で汚染されている可能性が示唆された場合は、以前に問題なく増幅できた鋳型DNAとプライマー対を用い、疑わしいDNA調製物を対照反応物に加えて増幅反応を実施する。対照DNAが増幅できない場合は、阻害剤の存在が示唆される。このような検証実験により阻害剤混入が疑われた鋳型DNAは、フェノール:クロロホルム抽出またはエタノール沈殿などの操作を加え、DNA調製物を再浄化する、もしくは抽出法の変更が必要性となる。
特に、新たなDNA抽出法を採用したときは、試料に混在するPCR阻害剤の影響度合いが異なる可能性があることを念頭に置き検証する。
また、用いた抽出方法によっては、DNA以外の夾雑物が260nmに干渉して、実体のない濃度に測定されることもある。近年、DNAおよびRNA濃度は、ナノドロップの使用により260nmでの光学密度測定値を使用して決定することが多いので、特に注意が必要である。
A260=1.0のとき、溶液中の精製核酸の濃度は、DNA溶液の場合は50µg/mLに、RNAまたは一本鎖DNA溶液の場合は40µg/mLである。オリゴヌクレオチドは、塩基長や塩基組成により多少変動するが、おおむね33µg/mLとなる。ただし、この係数の適用は高純度な核酸試料についての場合であり、260nmに干渉する不純物が混入した場合は、混入量に応じた実体のない濃度として計測される。核酸の紫外部吸収スペクトルの特性を図3に示した。
図3 核酸およびタンパク質の紫外部吸収スペクトル
分光倶楽部 基礎講座 第5回:核酸の濃度測定、波長スキャンデータ(GEヘルスケア・ジャパン社)を改変
https://www.gelifesciences.co.jp/technologies/spectro/spectclub/theo_05.html
一般的にDNA抽出物からのPCR阻害物には、タンパク質、RNA、有機溶媒、および界面活性剤が含まれる。タンパク質OD280と核酸OD260の最大吸収とを比較(OD260/280)して、抽出されたDNAの純度の推定が可能である。理想的には、OD260/280の比は1.8~2.0である。より低いOD260/280は、タンパク質または溶媒の混入を示し、これはPCRにとって問題となる場合もある。
鋳型DNAの品質に加えて、DNA量の最適化はPCR実験の結果に大きな利益をもたらす可能性がある。今日では、ナノ分光光度計の出力であるng/µLの濃度を測定するのが簡便であるが、PCRの反応は濃度でなく標的領域のコピー数が増幅される。すなわち、成功したPCR実験のための関連単位は分子数である。 最適な標的分子は104~107分子であり、前述の2.2に記載したように計算される。
核酸濃度を測定する技術で最も多く使用されるのは、260nm(A260)の吸光度測定である。しかし、本法は相対感度がA260の0.1に相当する濃度が約5µg/mL dsDNAという測定感度の制約があり、さらにこの測定法ではRNA、ssDNA、dsDNAを区別できない欠点がある。
・核酸の蛍光測定 :PicoGreen®(Molecular Probes社)
PicoGreen®試薬アッセイは、蛍光を基にした迅速かつ簡単な手法により、dsDNAを正確に定量できる。このアッセイは、従来のUV吸光度法に比べて感度が数倍高く、さまざまな濃度範囲に対して適応可能である。PicoGreen®を用いたDNA定量法は、通常、PCRによるアリル特異的なジェノタイピング、PCR増幅前後のdsDNAサンプルの定量、およびシーケンス前のPCR増幅収量の測定などに用い、ハイスループット処理が可能である。検出限界は250pg/mL、直線範囲は0.25~1,000ng/mLである。
PicoGreen®試薬は、二重らせんを形成しているDNAと特異的に結合し、DNAと結合することで青色光(λ=488nm)を吸収し、緑色光(λ=522nm)の蛍光を発する。他の蛍光DNA測定法としては、Hoechst色素のビスベンズイミド33258がある。本法は、DNA濃度を10ng/mLまで検出、定量できる。また、別の蛍光色素結合法として、Quant-iTTM試薬がある。これは、Hoechst色素を用いた測定法の400倍以上の感度を有する。これらの蛍光色素結合法は、サンプル中に混在するRNA、一本鎖DNA、タンパク質などの影響を受けることなく高感度な定量が可能である。
5 テンプレート数
PCR実験の増幅に使用する鋳型DNAの量は、目的用途が多様なため一概には決められない。すなわち、標的遺伝子の生物種および試料に混在するゲノムの生物種、もしくは遺伝子分析の過程で生じた試料によって異なってくる。例えば、ヒトの微生物感染性試料では、ヒトゲノム(ヒトミトコンドリア)および細菌ゲノム(プラスミド)が含まれる。また、試料によっては、ウイルス、酵母、真菌、原虫などのゲノムが同時に含まれることもまれではない。これらのゲノム遺伝子は、抽出方法によっても含有量は違うし、病態ステージによっても異なる可能性がある。従って、単にDNA濃度のみを測定しても、標的生物のゲノムDNAの抽出量は評価できないことが想定できる。
さらに、PCRなどの増幅実験には標的DNAのコピー数が重要なため、DNA濃度を表記しても試料中の鋳型DNAのコピー数は不明で、抽出試料によっては大きく偏在する可能性もある。生物種のゲノムサイズ例を挙げると、λファージ(4.8×104bp)、ヒトミトコンドリア(1.7×104bp)、大腸菌(4.6×106bp)、出芽酵母(1.2×107bp)、ヒトゲノム(3.3×109bp)と大きく異なる。表2にさまざまなDNAの重量とモル濃度を例示した。
表2 1µg中のさまざまなDNAタイプと分子数
DNAのタイプ | 分子数 |
---|---|
1kb RNA | =1.77×1012分子 |
1kb dsDNA | =9.12×1011分子 |
pGEM® Vector DNA | =2.85×1011分子 |
pBR322DNA | =2.1×1011分子 |
λ DNA | =1.9×1010分子 |
E.coliゲノムDNA | =2×108分子 |
Saccharomyces cerevisiae 半数体ゲノム |
=6.0×107分子 |
ヒトゲノムDNA 半数体ゲノムDNA |
=2.8×105分子 |
Zea mays(トウモロコシ) 半数体ゲノムDNA |
=2.3×105分子 |
遺伝子増幅により生じた増幅産物をテンプレートとする場合は、一般的には102~103bpである。このように、DNA量は同じでもテンプレート数は大きく異なる。仮に4kbプラスミドとヒトゲノム(3.3×109bp)で反応あたり同じ標的コピー数を維持するには、約100万倍のヒトゲノムDNAが必要となる。PCR実験での一般的過誤例として、反応系への多量のプラスミドDNAやPCR産物の添加がある。
確かに、あまりにも少量の鋳型DNA数では増幅収率は低いが、逆に多過ぎるDNA鋳型数での反応は非特異的増幅を生じやすくなる可能性がある。望ましくは、25~30サイクルでシグナルを得るために>104コピー程度の標的配列数から始め、反応の最終DNA濃度は≦10ng/µLに保つ。PCR産物を再増幅する場合、PCR産物の濃度は不明なことが多い(環境拡散を配慮して測定しないことが多い)ため、増幅反応物を1:10から1:10,000に希釈したものを使用する。
テンプレートの精製度とクオリティは、PCR 反応の結果を左右する重要な要素であり、さらに、テンプレート量はPCR の正確性に影響を与える。標準的に、ヒトゲノムDNAは最大200ngまでとし、できる限り少量を使用する。
サイクル数を増やす、新しくデザインしたプライマーを使用する、ホットスタートPCRを使用するなど、個々の反応条件を変更する場合は、特に少量のゲノムDNAテンプレート(10ng以下のヒトゲノムDNAなど)を使用する。
50µL PCR反応あたりのテンプレート量は、細菌DNA:1~10ng、プラスミドDNA:0.1~1ng、cDNA:2µLとする。cDNAをテンプレートとして使用する場合、cDNAの容量がPCR反応総量の10%を上回らないようにする。(逆転写反応液から5µL以下の量のcDNAを用いる)。過剰量のcDNAはPCRを阻害する可能性がある。
6 計算融解温度(Tm)
オリゴヌクレオチドの融解温度(Tm)、二次構造および設計の正確な予測は、PCR実験の効率および成功を導く重要な因子である。今日では、Tm計算の多数のソフトウェアが利用可能であるが、ユーザーはその限界を理解しないと、予測の精度と信頼性を低下させることもある。Chavaliらは多くのモジュールを詳細に評価し報告している(Chavali S. et al.、2005)。
Tmの計算式には、nearest-neighbor法、Wallace法、GC%法がある。Wallace法[Tm≒4(GC)+2(AT)]は、計算が単純で手作業で迅速に行うことができるため頻繁に用いられる。
塩基情報などの諸情報を入力するだけで正確性が高いとされるnearest-neighbor法によるTm計算が利用できるサイトも多い(以下に例示した)。本法は、隣接する塩基対の積み重ねエネルギーを考慮に入れているため、より正確なTm推定ができる。しかし、いずれの計算法でも、特定の反応に関する特定の情報がないため、あくまでも実際のTmを推定した理論値と捉えるべきであり、プライマーアニーリング温度の目安に過ぎない。自社の使用酵素試薬を選択して、含有試薬の組成をも加味しTm値を計算するモジュールもある。
塩基組成、塩濃度、オリゴ鎖の濃度、変性剤およびコンジュゲート基(ビオチン、ジゴキシゲニン、アルカリフォスファターゼ、蛍光色素など)もTm値に影響を与える。Tm値は、高塩濃度では上がり、高オリゴ濃度では下がる。また、GCリッチな配列では上がり、変性剤の存在下では下がるなどの応答が見られる。このように、バッファー組成などが異なる条件下ではTm値も変わるので注意すべきである。
最適なアニーリング温度を計算するために、以下の式が使用される:
OPT=0.3TmPrimer+0.7TmProduct-14.9
TmPrimerは、以下の式を使用して計算される:
TmPrimer=(ΔH/(ΔS+Rx ln(c/4)))-273.15+16.6log[K+]
産物TmProductは以下のように計算される:
TmProduct=0.41(%G-C)+16.6log[K+]-675/product length
ほとんどのPCR反応において、カリウム([K+])の濃度は50mMとして計算される:
『最近接塩基対法(Nearest Neighbor method)例
TmProduct= |
|
-273.15+16.6log[Na+] |
- ΔH:ハイブリッドにおけるNearest Neighborエンタルピー変化の合計[kcal/mol] (表3参照)
- -10.8:ΔS(initiation)[cal/mol・K]
- ΔS:ハイブリッドにおけるNearest Neighborエントロピー変化の合計[cal/mol・K] (表3参照)
- R:気体定数(1.987cal/deg・mol)
- Ct:オリゴのtotalモル濃度[mol/l](0.5µMで計算)
- Na+:Na+のモル濃度[mol/l](50mMで計算) 』 ライフサイエンス > カスタム製品 > カスタムオリゴDNA > FAQ・技術情報:Tm値の計算(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社)から引用
http://www.sigmaaldrich.com/japan/lifescience/custom-products/custom-dna/oligo-learning-center.html
表3 最近接(Nearest Neighbor)塩基対パラメータ
Interaction | ΔH | ΔS |
---|---|---|
[kcal/mol] | [cal/mol・k] | |
AA/TT | -9.1 | -24 |
AT/TA | -8.6 | -23.9 |
TA/AT | -6 | -16.9 |
CA/GT | -5.8 | -12.9 |
GT/CA | -6.5 | -17.3 |
CT/GA | -7.8 | -20.8 |
GA/CT | -5.6 | -13.5 |
CG/GC | -11.9 | -27.8 |
GC/CG | -11.1 | -26.7 |
GG/CC | -11 | -26.6 |
※表の見方
Interactionは次のように表記
5’→3’ 3’←5’
AT/TA
例えば、AC(5’→3’)のΔHは、GT/CAのΔH:-6.5[kcal/mol]となる
ライフサイエンス > カスタム製品 > カスタムオリゴDNA > FAQ・技術情報:Tm値の計算(シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社)から引用
http://www.sigmaaldrich.com/japan/lifescience/custom-products/custom-dna/oligo-learning-center.html
Tm値計算のサイト例
『NGRL 便利ツール:Oligo Calculator』(日本遺伝子研究所社)
http://www.ngrl.co.jp/tools/0217oligocalc.htm.htm
『Tm Calculator』(アプライドバイオシステムズ社)
http://www6.appliedbiosystems.com/support/techtools/calc/
『Tm Calculator』(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)
http://www.finnzymes.com/tm_determination.html
『Tm Calculator』(ニュー・イングランド・バイオラボ社)
https://tmcalculator.neb.com/#!/
『OligoAnalyzer 3.1』(Integrated DNA Technologies社)
http://www.idtdna.com/analyzer/Applications/OligoAnalyzer/
『Calculating the melting temperature of PCR primers』(MacVector社)
http://macvector.com/blog/2016/04/calculating-the-melting-temperature-of-pcr-primers-2/
7 熱サイクル条件の設定
- PCRは他の遺伝子増幅法と比べ、鋳型DNAおよびアンプリコンの二本鎖DNAを熱誘導変性(鎖分離)する点が大きく異なる。さらに、アニーリング反応および伸長反応と異なる3もしくは2ステップの温度を巡回させるサーマルサイクラーが不可欠であり、その機種の性能に依存した効果も受けやすい。サイクリング時間はテンプレートのサイズおよびDNAのGC含量により異なる。
最初の変性工程は94~98℃で始まり、通常は94℃で1分間セットされることが多い。耐熱性ポリメラーゼといえども、94℃以上の高温に長くさらすと酵素は不活化してくる。各社のHPで温度に伴う酵素の半減期を調べ、変性温度と変性時間とでの効率化を算出し、DNAポリメラーゼ酵素の不活性化を最小限に回避するように設定する。DNAポリメラーゼが不活化すると、PCR産物の収量が低下する。
ホットスタートPCRの中でDNAポリメラーゼに修飾を加えたものは、最初の変性時間を3~9分間に延長して酵素の活性化処理を行う。(方法の詳細については各社の添付文書を参照のこと) - 次のステップからは、PCR特有の熱変性、アニーリングおよび伸長反応と3変調温度サイクルの繰り返しで、25~35サイクル繰り返す。35サイクル以上に増やすとPCR産物は増加する反面、サイクル数が多過ぎ意図しない生成物が増加する。そのため、サイクル内の各工程の保持時間および温度は、標的アンプリコンの産生を最適化するように設定する。サイクル工程での最初の熱変性の時間はできるだけ短く設定する。ほとんどのDNAテンプレートでは、通常94℃の10~60秒で充分である。熱変性工程の温度と時間は、鋳型DNAのGC含量に影響を受ける。GCリッチな領域の場合は、98℃数秒の変性条件を試してみる。ただし、酵素の失活には充分に考慮した条件設定が必要となる。また、工程時間の設定はサーマルサイクラーの性能、設定温度までへの到達速度によっても変わる。
次の工程であるプライマーのアニーリング温度は、プライマーのTm計算値よりも約5℃低い温度(理想的には52~58℃)で30秒間と設定する。次の伸長反応温度と時間は使用するDNAポリメラーゼにより異なってくる。Taq DNAポリメラーゼの最適伸長温度は70~80℃で、2kbを伸長させるのに1分を要し、その後1kbの増幅追加ごとに1分を必要とする。Pfu DNAポリメラーゼは高忠実度を求めるPCRに推奨され、最適伸長温度は75℃で、1kbごとの増幅追加に2分を必要とする。特定のDNAポリメラーゼの正確な伸長温度と伸長時間については、製造元の解説書を参照する。 - 熱サイクルの最終工程は、伸長不充分なアンプリコンなどの伸長完了を目的とすると同時に、Taq DNAポリメラーゼの場合は、すべてのPCR産物の3’末端にアデニン残基の付加を達成するために5分以上の伸長時間をとる。
- 熱サイクル最終の反応停止は反応混合物を4℃に冷却、もしくはEDTAを最終濃度10mM添加することにより反応は停止する。
2017.12