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検査室支援情報

Lab Tour

vol.03 市立甲府病院 中央検査室

LASをCLINILOG V4に更新
―新たなモジュールを導入し、業務の効率化を実現する― ②

市立甲府病院(399床)は、地域の中核病院として質の高い医療を提供し、地域医療連携を重視する考えのもと、地域の診療所との連携を進めている。基本理念に「いのちに光を、こころにやすらぎを」を掲げ、患者の立場を尊重した信頼関係に基づく医療を心がけている。中央検査室では2024年2月にエイアンドティー社(以下、A&T社)の検体検査自動化システムCLINILOG Ver.3から同V4へ更新、合わせて閉栓モジュール(SE)、サンプルステーションモジュール(SS)、冷蔵ストッカーモジュール(RS)などを導入し、より効率的な業務体制の構築を実現した。


検査の追加依頼が容易に

更新前の課題として“必要な検体が搬送ライン上のどこにあるのかが分かりにくいこと”、“追加検査を行う際にLISからの操作では検体の搬出ができないこと”があった。そのため、V4への更新とともにSE、SS、RSなどを導入し、これらの課題を解消した。「保存検体の検索が容易になり、追加検査の対応が効率化された」と中川技師長は語る。更新後は検体ラベル(患者情報)を読ませることでその検体がどこにあるのか一目で分かり、必要な検体が探しやすくなった。

たとえば、臨床側から検査の追加依頼があった場合には、保存検体をLIS上で呼び出すと検体量を画像で確認できる。以前は臨床側から依頼を受けて検体量を確認するために一度電話を切り、必要な検体をピックアップして追加検査が可能かどうかを確認したうえで、電話を掛け直していた。V4導入により1日10件程度ある追加検査の依頼に対して、通話中でも近くのLIS端末から保存検体をすぐに呼び出し、追加検査の可否をその場で確認できるようになった。加えて、LIS端末上で検体の確認とSSからの検体の取り出し指示を一括で実行できるようになり、臨床側を待たせることがなくなった。

従来、検査を終えた検体は保存期間後に毎日手作業で処分していたが、RSの導入により自動廃棄が可能となった。また、保存検体はSEにより自動で閉栓されているため、落下時の検体飛散リスクが大幅に減少された。これにより、検体に直接触れることなく廃棄処理が行えるようになったため、業務の効率化に加えて感染防止の効果も期待される。RSおよびSEの導入は、臨床検査技師の業務改善、安全性向上の両面でも大きなメリットとなっている。

図2 SSを操作する畑山主査

図2 SSを操作する畑山主査

CLINILOG COTIの導入

集中管理システム(COTI)もV4と同時に導入した。以前は異常が発生した場合には、該当の機器まで出向いて確認していたが、導入後はCOTIの前に座れば各装置の状況が分かるようになった。営業からは他施設での運用などの情報提供もあり、中川技師長は製品に対して強い関心を寄せていたという。

価値ある検査情報の発信

中川技師長はこれまでの検査室を振り返り、「現在、検査機器やシステムの発展・日々の精度管理を行う仕組みの確立により、臨床検査の正確性は飛躍的に向上した。今後、医療DXやAI(人工知能)の進歩により、臨床検査技師の業務はさらに拡大していくと考えられる。しかしながら、臨床検査技師にとって、臨床側への価値のある検査情報の発信が最も重要であることはこれからも変わらない」と述べた。

ミスを防止し業務を効率化

LASは、大規模病院への導入をイメージすることが多いが、中川技師長は「中規模病院こそ導入意義は大きい」と話す。畑山主査も「人間はミスを起こすが、機器は人間の手による作業を減らし、ミスを防ぐことができる」と評価した。さらにタスクシフト/シェアにより、臨床検査技師の仕事の幅が広がっているため、業務を効率化して新しい分野にも進出すべきと述べた。現在の中央検査室は、細菌検査、病理検査、輸血検査を各2名体制で実施している。今後はより自動化を進めることで各検査を3名体制にするなど、働きやすい環境を目指す。

また、同院では、予防医療の取り組みの一環として2025年10月から人間ドックと健康診断を実施、地域の方々の健康寿命を延伸させる。中央検査室も検体検査や生理検査などの業務を支援する予定だ。

一方、中央検査室では臨床検査技師の専門知識を向上させるために、学会や研修会での発表、各種認定の取得を推奨しており、病院側の支援も得ている。2025年10月11日、12日には山梨県で2025年度 日臨技 関甲信支部・首都圏支部医学検査学会(第61回)が開催される。「甲斐創造 ~未来への羅針盤~」をテーマとしており、市立甲府病院では中央検査室の各部門から演題発表を求めるなど学会の成功に向けて準備を進めている。

臨床検査技師の増員が難しい中、LASの活用により院内で実施可能な検査項目の拡大や臨床検査技師による採血の対応ができるようになった。今後はタスクシフト/シェアなどの実施も視野にいれて、更なる業務の効率化を目指し対応を進めていく方針だ。

2025.09(取材日 2025.06.05)

施設情報(2025年4月1日現在)

市立甲府病院

病床数 399床
診療科 31科
住所 〒400-0832 山梨県甲府市増坪町366番地
電話番号 055-244-1111
ホームページ  https://www.city-kofu-hp.jp/

筆者略歴

小林 利康

医療ライター

1988年、薬業時報社(現:株式会社じほう)に入社。約30年間、臨床検査領域の取材、企画立案に従事。メディカル・テスト・ジャーナル(MTJ)への記事掲載などに尽力。2018年、じほう社退職。その後、2年間宇宙堂八木書店にて企画立案などを行い、現在はフリーの医療ライターとして活躍中。