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検査室支援情報
Lab Tour
vol.03 市立甲府病院 中央検査室
―新たなモジュールを導入し、業務の効率化を実現する― ①
市立甲府病院(399床)は、地域の中核病院として質の高い医療を提供し、地域医療連携を重視する考えのもと、地域の診療所との連携を進めている。基本理念に「いのちに光を、こころにやすらぎを」を掲げ、患者の立場を尊重した信頼関係に基づく医療を心がけている。中央検査室では2024年2月にエイアンドティー社(以下、A&T社)の検体検査自動化システムCLINILOG Ver.3から同V4へ更新、合わせて閉栓モジュール(SE)、サンプルステーションモジュール(SS)、冷蔵ストッカーモジュール(RS)などを導入し、より効率的な業務体制の構築を実現した。
信頼される検査情報を提供
市立甲府病院の中央検査室は、検体検査、生理検査、病理検査、細菌検査、輸血検査の各部門に分かれ、基本目標として“信頼される検査情報の提供”、“専門知識の向上”、“患者様への思いやり”、“医療事故防止”、“感染防止” を掲げる。常勤の臨床検査技師は18名であり、そのうち検体検査は5名(うち2名は輸血検査を兼務)が業務を行う。1日の平均検体投入数は約400本。検査所要時間(TAT)は再検込みで60分を目標としている 。
全国公私病院連盟が2023年に発表した「病院運営実態分析調査の概要」(同年6月調査)によると、一般病院での検査室における臨床検査技師の平均人数は100床あたり7.1名とされている。同院の病床数は399床だが、臨床検査技師数は18名であり平均人数よりも少ない。そのため、検体検査自動化システム(LAS)を積極的に活用することで業務の効率化を推進している。機器にできることは機器に任せることで負担を減らし、臨床検査技師は臨床検査技師にしかできない仕事を担う。
迅速に精確な検査を実施
LASの導入前について中川英二技師長は「機器ごとにワークシートを作成し、検体を手作業で分注した後にそれぞれ機器に運んでいた」と話した。手作業ではどうしてもヒューマンエラーの発生が避けられなかった。
2009年にA&T社のCLINILOG Ver.3を導入し、その後2024年2月にCLINILOG V4に更新した。以前は5本ラックを用いて生化学自動分析装置に検体を運搬する装置を使用していた。しかし、他の分析装置を搬送に接続するなど運用を変えるうえで、検体を5本ラックではなく1本搬送できるシステムの採用を希望していた。
CLINILOGの導入で一度に多くの検体を精確・迅速に測定することができるようになり、職員の業務負荷の軽減につながった。また、夜間でも免疫検査など多くの項目が測定できるようになったことから臨床側からの評価も上がった。
中川技師長は「2009年当時、1本搬送を取り扱っていたメーカーはA&T社ともう1社のみであった」と述べ、どちらを導入するか悩んだという。2008年にA&T社から分析前工程統合モジュール(MPAM)が発売され、分注スピードの速さが決め手となり採用となった。手作業で行っていた分注が自動化されたことで、業務がスムーズに進んだ。
検査データの信頼性を高めるためには、“手作業によるリスクを減らすこと”、“精度管理を確実に実施すること”などが必要であり、MPAMの導入により、これらの課題が解消された。万が一データに異常が認められた場合は、関連項目や前回値などの確認を行い、異常値の原因を調べる。分注量の変更も臨床検査情報システム(LIS)のマスターを変更するだけで行えるため、外注などの新規項目を登録する際に役立っている。

図1 市立甲府病院へ導入されたCLINILOG
診療前検査をアピール
LASの導入に向け、ほとんどの検査項目について診察前に検査できることを臨床側にアピールした。中川技師長は、「患者様の検査結果を当日中に報告できること、診察・診断・治療に貢献できることを示し、病院側の理解が得られた」と話す。また、LASが導入される以前は、外注検体は分注せずそのまま外注先へ委託していた。CLINILOGの導入により、外注検体もMPAMに投入し、分注後に子検体を外注先へ委託することで、検査を効率的に行えるようになった。
本来は外注へ検査を依頼する項目についても、採算がとれるものは院内で実施していると話す。試薬代やコントロール・キャリブレーター費用、さらに臨床側からの要望、患者メリットも考慮している。
LASの導入効果として、臨床検査技師による外来採血が実施できるようになったことを挙げた。看護師からの要望もあり、午前8時30分から9時30分、11時30分から12時30分までの2時間行っている。また、免疫検査など院内で検査可能な項目が拡大したことからLASのメリットが院内でも認知され、V4への更新の際も病院側は前向きな対応となった。
サポート体制を評価
V4への更新について、すでにA&T社のLASを10数年使用したなかでルーチンの業務に支障をきたす故障や停止がなかったことや、軽微なエラーがあってもリモートで修復できることをメリットとして挙げ、“1度でもエラーが起これば徹底的に問題解決に努めるA&Tの姿勢”を評価した。軽微なトラブルの場合にはコールセンターからアドバイスを聞くこともでき、臨床検査技師自ら迅速に修理することができた。また、夜間もコールセンターの対応が可能なことから、畑山一貴主査はA&T社のサポート体制について、「検査機器を完全に止めないで復旧できた」と評価した。
2025.09(取材日 2025.06.05)
施設情報(2025年4月1日現在)
市立甲府病院
| 病床数 | 399床 |
|---|---|
| 診療科 | 31科 |
| 住所 | 〒400-0832 山梨県甲府市増坪町366番地 |
| 電話番号 | 055-244-1111 |
| ホームページ | https://www.city-kofu-hp.jp/ |
筆者略歴
小林 利康
医療ライター
1988年、薬業時報社(現:株式会社じほう)に入社。約30年間、臨床検査領域の取材、企画立案に従事。メディカル・テスト・ジャーナル(MTJ)への記事掲載などに尽力。2018年、じほう社退職。その後、2年間宇宙堂八木書店にて企画立案などを行い、現在はフリーの医療ライターとして活躍中。