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検査室支援情報
Lab Tour
vol.01 横浜市立大学附属病院 臨床検査部
LIS×LAS連携機能を導入
―業務の効率化を進め人材育成に取り組む― ②

横浜市立大学附属病院(病床数:671床)は、横浜市唯一の特定機能病院であり、地域医療の最後の砦と位置づけられている。「市民が心から頼れる大学病院」として高度かつ安全な医療を提供している。2023年1月に検体検査自動化システム(LAS)を更新し、臨床検査情報システム(LIS)・LASともにエイアンドティー社(以下、A&T社)の製品となり、「LIS×LAS連携機能」が新たに導入された。業務をより効率化させ、人材の育成に取り組むとともに、正確な検査情報を迅速に臨床へ報告している。
LISとLASが連携することのメリット
A&T 社では新たにLIS×LAS の連携機能として、「CLINILAN Tc」と「分析項目選択」を開発し、横浜市立大学附属病院へ初めて導入した。
通常、CLINILOGの制御端末(CLINILOG Tc)は検査室に1台設置している。新たに実装された連携機能「CLINILAN Tc」では、検査室に複数台あるLIS の端末からCLINILOG Tcの閲覧・操作が可能となった。
東主任は「LASでエラーが発生した際、すぐ近くのLIS端末で確認できるため、装置間を移動してLASの状況を見に行く頻度が減った」と述べた。
図2 CLINILAN Tc(中央に CLINILOG Tcの画面を表示)
「分析項目選択」は、分析装置ごとに分析項目を選択・設定することができる機能だ。今まではLAS で分析項目をコントロールしていたが、LIS端末からもできるようになった。
試薬の交換などで特定の項目をマスクする場合や、2台の分析装置のうちの1台を停止する場合に、LIS端末で1台目の測定項目を2台目の分析装置に移し、測定のパス設定を行えるようになった。また、夜間休日の分析項目設定もLIS端末から容易に行える。
黒沢係長は「これまでもマスク機能はあったが、設定をそれぞれの機器で実施する必要があった。今はLIS端末だけで簡単に設定ができるようになった。装置が2台ある場合は一方で測らず、もう一方で測るよう自動で割り振ることができている」と評価した。
図3 分析項目選択
LIS×LAS連携機能への今後の展望
横浜市立大学附属病院ではパニック値が出た場合、LISで判断して病院情報システム(HIS)に自動でコメントを書き込める機能を搭載しており、臨床側にその連絡が届く仕組みとなっている。この際、確認漏れを防ぐために、HISへの連絡内容は部長名で書き込むことができる。この機能は横浜市立大学附属病院で初めて採用された。
矢島技師長は、「LIS×LAS 連携機能で、検査情報と搬送システムを一体的に管理できる。今後はHIS との連携を一層高めることで、検査情報の有効活用を目指したい。前述のとおり、パニック値を臨床側に報告することで、逆に臨床側からも情報をもらえるシステムにしたい。臨床側との連携がさらに取りやすくなることを期待している」と述べ、臨床側と連携強化したい意向を示した。また、機器の更新については、「人員を減らせるかどうかは分からない。業務を効率化し人材育成を図るべきである。LIS×LAS連携機能により業務を効率化することで、検査データを集中管理する。しかし、メンテナンスや補助をする職員も必要である」とも指摘した。
2024年6月現在、LIS×LAS連携機能を導入して1年半が経過した。矢島技師長は「我々は検体検査部門の一体化を目指している。今回の更新は多岐にわたる業務に対して、担当者の多様化を進める足掛かりとなり、業務の効率化が飛躍した」と振り返る。また、「今後は、検体検査測定の主要となりうる質量分析法も注視し、取り組んで行きたい」と語った。
横浜市立大学との連携を視野に
横浜市立大学にはデータサイエンス学部があり、データの利活用について研究している。このほか医学部のなかにも病院経営の理論と実践について学べる修士課程や博士課程がある。矢島技師長は、「横浜市立大学には莫大な情報がある。大学としてこれらの情報を活用し研究・分析することで、より有益な検査情報を依頼者に還元できるようにしたい」と思いを述べた。
エキスパートな人材の育成へ
今後の検査室の未来について矢島技師長は、「検査業務のなかでエキスパートな人材を育成し、増やしたい」と述べた。また、「単純な作業は機器が正確にできる。人間はどうしてもミスを起こしてしまうので、これからは単純な作業は機器に任せ、判断や指示などは人間が行う必要がある」とした。
ひとつひとつの業務を自動化し、LIS やLASで行う作業・職員が判断して行う業務の2層に分けることで、当直を含めた検査の品質向上につながる。多岐にわたる検査室の業務において、これら2層の組織体制の構築を目指していく必要がある。矢島技師長は最後に「これからの臨床検査について、業務をより正確・迅速に実施できるようにしていきたい」と締めた。
2024.09
施設情報(2024年4月1日現在)
横浜市立大学附属病院
病床数 | 671床 |
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診療科 | 39診療科 |
住所 | 〒236-0004 横浜市金沢区福浦3-9 |
電話番号 | 045-787-2800 |
ホームページ | https://www.yokohama-cu.ac.jp/fukuhp |
筆者略歴
小林 利康
医療ライター
1988年、薬業時報社(現:株式会社じほう)に入社。約 30 年間、臨床検査領域の取材、企画立案に従事。 メディカル・テスト・ジャーナル(MTJ) への記事掲載などに尽力。2018 年、じほう社退職。その後、2 年間宇宙堂八木書店にて企画立案などを行い、現在はフリーの医療ライターとして活躍中。