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検査室支援情報
Lab Tour
vol.01 横浜市立大学附属病院 臨床検査部
LIS×LAS連携機能を導入
―業務の効率化を進め人材育成に取り組む― ①

横浜市立大学附属病院(病床数:671床)は、横浜市唯一の特定機能病院であり、地域医療の最後の砦と位置づけられている。「市民が心から頼れる大学病院」として高度かつ安全な医療を提供している。2023年1月に検体検査自動化システム(LAS)を更新し、臨床検査情報システム(LIS)・LASともにエイアンドティー社(以下、A&T社)の製品となり、「LIS×LAS連携機能」が新たに導入された。業務をより効率化させ、人材の育成に取り組むとともに、正確な検査情報を迅速に臨床へ報告している。
矢島智志技師長は臨床検査部について、「検査に関する情勢を的確に把握し、チーム医療の一組織として医療に貢献していくことへ職員全体で取り組んでいる」と述べ、病院の理念や方 針に基づき、組織の一部である中央部門としての認識を示した。臨床検査部の技師は52名。検査所要時間(TAT)を外来採血終了から60分以内にすることを目標としている。
また、臨床検査部はISO15189の認定取得にも力を入れている。矢島技師長は「2010年1月18日に臨床検査部と輸血細胞治療部で取得、国公私立大学附属病院では11番目、8つの公立大学病院のなかでは一番早く取得させていただいた」と述べた。その後、2018年に生理分野で、2021年に病理部でも認定を取得し、現在に至る。臨床検査部はISO15189の認定を2007年(第2版)で取得し、その後すぐ2012年(第3版)の更新を受けた。現在、すでに2022年(第4版)への更新に向けた取り組みも開始しており、2025年6月頃に予定している審査に向け、手順書の改訂を行っている。
LASは2回の更新を実施
横浜市立大学附属病院は1991年に移転し、LASは現在3代目となる。初代の導入時には、自動遠心を含む分注装置と生化学自動分析装置のみを接続した。導入によりサンプルカップに分注した子検体を、分析装置で使用する5連ラックで搬送する一連の工程が自動化された。生化学以外の検体は職員が各分析装置に運んでいた。しかし、当時の自動遠心分離装置は故障が多かったため、手作業でも検体の遠心分離を行い搬送ラインに投入していた。
2013年にLASを更新し、2代目となった。この時、検体検査の効率化に加え、学術的分野を横断化し、分析装置(測定原理)の測定領域に準じた検査実施体制を構築するために、検査室内の壁を取り払いワンフロアの構造へ転換した。LASには生化学自動分析装置1機種3台と免疫化学自動分析装置2機種各2台を接続し、さらに業務の効率化を進めた。当初、LASに自動遠心分離装置および検体仕分装置を取り入れることも検討したが、導入コスト、処理能力やTATを考えると手作業での運用が効率的と判断し、接続はしなかった。初代および2代目のLASは検体を投入し、親検体から子検体へ分注し、分析装置に搬送して検査を終える運用であった。しかし、一方通行の搬送ラインであったため、再検査の際には職員が検体を回収して投入口まで運ぶ必要があり、動線に課題があった。
また、臨床検査部は建物の構造上、搬送ライン付近に大きな柱があり、最適なLASの場所を確保することが難しかった。さらにLASに投入している検体数は1日平均1,100本もある。そのため、3代目のLASへ更新の際には、業務の効率化を考え、一方通行ではなく双方向で搬送可能なLASの導入を検討していた。その結果、2023年1月にA&T社のLAS CLINILOGを3代目として導入した。接続する分析装置の構成は2代目と同様とし、検査終了後の検体は冷蔵保管庫である冷蔵ストッカー(RS)に格納、検体の保管と廃棄を自動で行うシステムを採用した。これにより再検査の際も自動で検体を探し投入口まで運ぶことが可能になった。
CLINILOGへの更新に関して矢島技師長は、「RSを採用したことで、再検査の際に保管検体をピックアップできるため、検体を探して手作業で搬送ラインに投入する手間がなくなった」と述べた。
RSに保管された検体の状態は写真で確認できる。そのため、追加検査の問い合わせを受けた際に、LIS端末で検体量の確認を行えることから、臨床側へ電話をかけ直す手間がなくなる。また、保管された検体は設定した期間が経過すると自動で廃棄され、その後専門の廃棄業者に引き渡され焼却される。
3代目のLASでは親検体も測定することで、子検体の本数を減らしTATも早くなったほか、以前のLASで頻発していたラベルのトラブルもなくなった。日々の運用では、LIS・LASともにA&T社の製品にすることで管理の一体化が可能になった。例えばLIS端末で収納された検体を呼び出し、自動ピックアップすることも可能になった。これらの結果、搬送ライン上の渋滞が減り業務の効率化を進めることができた。
図1 横浜市立大学附属病院へ導入されたCLINILOG
2024.09
施設情報(2024年4月1日現在)
横浜市立大学附属病院
病床数 | 671床 |
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診療科 | 39診療科 |
住所 | 〒236-0004 横浜市金沢区福浦3-9 |
電話番号 | 045-787-2800 |
ホームページ | https://www.yokohama-cu.ac.jp/fukuhp |
筆者略歴
小林 利康
医療ライター
1988年、薬業時報社(現:株式会社じほう)に入社。約 30 年間、臨床検査領域の取材、企画立案に従事。 メディカル・テスト・ジャーナル(MTJ) への記事掲載などに尽力。2018 年、じほう社退職。その後、2 年間宇宙堂八木書店にて企画立案などを行い、現在はフリーの医療ライターとして活躍中。