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検査室支援情報
精度管理の考え方
統計的な問題についてのメモ(10)
10)
マルコフ А.А.Марков の定理
変量Xが負の値を取る確率0で、母平均が存在するならば、cを1より大きな任意の数として次の関係が成り立つ
母平均の定義から
・・・(10-1)
c>1として
積分をcでわけると
右辺の第1項は負にならないので
xがcのとき、右辺の積分範囲内で一番小さな値をとるので、xにc
を当てはめると、
積分式を確率の形式に書き直せば、
すなわち
さらに、変量Xが負の値を取る確率0で、母平均、母分散
が存在するならば、
(10-1)で、Xの代わりに(X-)2とすると、次のチェビシェフ П.Л.Чебышевの定理が得られる。
分散の定義から
・・・(10-2)
k>1として、変数xがその平均値から、標準偏差のk倍以上離れない確率を考えることにすれば、前と同じく積分式を範囲で分割して、
右辺の第2項はk>0のとき負にはならないので、
(X-)2の項について、積分範囲の中でもっとも小さな値をとるのは、xが
に近いときで、第1の項では上限、
-k
、第2の項では
+k
であるから、それぞれを当てはめると、
すなわち
・・・(10-3)
右辺の第1項はxが-k
より小さくなる確率をいい、第2項はxが
+k
より大きくなる確率をいっているので、確率を表す式に書き直すと、
すなわち
・・・(10-4)
(10-4)はチェビシェフの不等式とよばれ、分布型によらず成立する。
確率pで起きる事象をn回試みたとき、二項分布の性質から、標本の平均mと分散は
だから、(10-4)に当てはめると、
・・・(10-5)
>0として任意に
を選んだとき、
ならば
であるから、(10-5)は
・・・(10-6)
と表すことができる。
(10-6)が示しているのは、がどんなに小さな整数であっても、実験試行の回数nを十分に大きくすれば、確率Pを小さくすることができることを示している。
これを大数の法則 Low of Large Numbersとよぶ。
大数の法則は、試行回数を十分に多くすれば、期待値より任意に異なった小さな数以上に隔たる確率がゼロになることを示している。すなわち、標本の確率はその期待値に収束するという確率的な性質を示している。
たとえば、未知の母平均を持つある分布について、母分散5であることが分かっているとき、標本平均が母平均よりたかだか3だけしかはなれていない確率が0.95であるためには、どれくらいの大きさの標本が必要となるか考えてみよう。すなわち危険率を0.05%として標本平均が信頼に足ると保証するには何回の試行を必要とするかが問題である。
母平均=5であるので、標本分散
は
Pは0.05を越えないようにしたいので、(10-4)から、
と考えると、
を満足すればよい。
すなわち、(10-4)の左辺から
(x-m)をたかだか±3に考えるので、
したがって、標本の大きさは少なくとも12必要である。