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精度管理の考え方中 恵一

Q24 Answer

Q.24

内部精度管理の管理幅についての質問です。
今年度より別の施設で業務しているのですが、現施設での管理幅が非常に狭く、正直この幅が妥当なのかと疑問さえ思っています。もちろん、その管理幅に含まれるためにメンテナンスを多く行い、管理幅には入っています。試薬LOTの変更に伴いデータが若干変化した場合、1%以下の補正式を入れて管理幅に入るように努めています。
機器にもよるかとは思いますが、どのレベルまでの精密性を保つべきなのでしょうか。
(神奈川県 M様)

A.24

品質保証と品質管理の目的は、経営上その施設の信頼を勝ち取ることにあります。
医療機関の場合には患者さんの信頼を得るために必要となる手段です。
品質管理はしたがって、経営上の問題であるので与えられた経費で最善を尽くすことが求められます。無駄に精度を誇っても意味のないことです。

さて、精度管理上の管理幅のことを問題にされているようですが、現在ある施設設備と、分析装置、検査技師さんの技術レベル、モチベーションなど与えられた条件で、どれほどの精密性があるのかは、試してみなければ正しく理解できません。
現行の管理幅が狭く厳しいような気がする、とおっしゃっている片方でメンテナンスなどを徹底していれば、その管理幅が維持できるようなことも言われています。ただ、時折管理幅に収まらない時があるようで、その時には「補正式」を使うと言われています。
やみくもに、精度を高くすることは、かえって経営上逆効果であったり、担当技師に精神的なストレスを与えるばかりです。
まず、管理物質(プール血清や市販品)を用いて一度、1週間から30日かけ、日内変動と日差変動を求めてみることが肝要です。検査室外部の人たちからすれば、日にちをまたいだ時の日間誤差が気になるところですから、特にロットが変わった時の変動や担当者がローテーションした時などは注意しなければなりません。
しかしながら、検量線物質などを用いてロットの変動を吸収する工夫がなされているので、「補正する」というのはまったく好ましくありません。過去にもさまざまな精密性に関するデータが出されていますが、主に診療上必要となる精密性に参考となるでしょう、というものでした。個々の施設が目標とするものではありません。
もちろん、誰かが貴施設の精度管理に対してこれこれを管理目標にしなさい、と言えるものではないのです。

以上、基本に戻って、もう一度精度管理目標を設定し直しされることをお勧めします。

※文献をご紹介します。
自施設だけで孤立した感があって、不安な場合に参考になるもの
 山口 忠幸、高柳 稔:ネットワークを利用した精度管理システム
 臨床検査 58;599-606,2014

基本に立ち返る時、参考になる小論文
 細萱 茂実:精度管理に必要な統計学
 臨床検査 58;592-597,2014

中 恵一
2014年5月23日