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精度管理の考え方中 恵一

Q21 Answer

Q.21

管理図でσ法により、±2σを警告限界、±3σを管理限界と設定しています。管理限界であるUCL、LCLの計算は、±A2±1.88となっています。これは、管理限界である、±3σに相当すると思います。
±2σの警告限界を計算する場合は、係数である1.88 はいくつになりますか。(埼玉県 K様)

A.21

管理図法で、管理限界を設定するにはさまざまな考えがあります。もっとも一般的な手法は、Xの分布からその3SD範囲を求める方法です。(参考: 『精度管理の考え方』8-13 管理図
このとき、Xの標準偏差を推定する方法として、Xの最大値と最低値の範囲の平均値に係数dで除して求める方法が用いられたことがありました。管理図は3SDで管理限界線を求めますからこのdを使って標準偏差を推定して管理限界線を求めます。品質管理に管理図を導入したShewhartが、管理限界線を求めるにあたって係数dを使ったのが始まりです。

なお、Rから標準偏差を推定する数学上の根拠については、『精度管理の考え方』 8-16 R管理図の特徴に示しています。

ご質問では、±2σを管理限界幅としてお考えになりたいように取れるのですが、管理限界は、そのバッチで処理された検査結果が管理下にないと宣言することになりかねないため、不用意に狭くすることを薦められません。上には、ご興味にお答えするために、導出するための参考をお示ししましたが、今日的には、SDの計算が計算機の発達によってすこぶる簡単ですし、nの数、すなわちバッチ内に挿入する精度管理試料の本数(もしくは抜き取り検査の本数)によっては、R(最大値と最低値の幅)よりも、標準偏差(SD)そのものを用いられることが好ましいと考えられます。これについても『精度管理の考え方』をご参照ください。
いずれにしても、管理限界値についての設定には、再度十分お考えになられることをお薦めいたします。

参考文献として次のものを挙げておきます。

  • 『新編 日科技連 数値表』p2
  • 『品質管理教程 管理図法』日科技連

入手しやすい最近のもの

  • 『品質管理入門テキスト 改訂2版』奥村士郎著 日本規格協会

なお、管理図と検出力の有効性について、易しい解説がWEB上に掲載されています。ご参考になると思います。

中 恵一
2008年4月22日