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精度管理の考え方
数理統計学で使う基本的な用語
モーメント:積率
ある集団がどのような分布を示すかについて、分布図を描くことができれば直感的に多くの特徴を見て取ることが可能である。しかしながら、図で示す方法ではあいまいな点が多く、数学的に数値で示すことができれば明確になることも多い。その分布の特徴を数値化する工夫として、モーメント:momentと呼ばれるものがある。モーメントは積率ともいわれ、分布の平均値やバラツキ、ひずみや尖り度を数値化するものである。分布のモーメントは、密度関数が不明であるときに分布の特徴を説明するのに有用である。
f(x) を連続確率変数Xの密度関数とするとき、点において、これを中心とし、を幅とすると、密度関数の下に占める面積は、高さを、幅をとする長方形の面積で近似的に計算され、その値は、・である。原点の周りのk次のモーメントを次のような和で表すことにする。
・・・(B-1)
ここで、幅を限りなく小さくし、ゼロに近づけたときの極限値をf(x) に対する原点の周りのk次のモーメントとして定義することにすれば、和を積分値で表して次の式で与えることができる。
・・・(B-2)
一般に平均値をμとするとき、xk をで置き換えると、この式から密度関数f(x) について平均値の周りのモーメント が与えられる。
・・・(B-3)
密度関数f(x) に対する1次のモーメントは次の式で表され、これは平均値を与える。
・・・(B-4)
この式は、式(B-1)に照らしてみると、次の式に相当する。
・・・(B-5)
この式に含まれる、f(x) は、高さを、幅をとする密度関数の下に占める長方形の面積であった。すなわち、ヒストグラムにおける相対度数である。これに点xの値をかけたものを、総和するのでこの式(B-5)の表すのは平均値である。
平均値をとして、式(B-4)を改めて書き直しておこう。
・・・(B-6)
式(B-3)を用いて、密度関数f(x) に対する平均値の周りの1次のモーメントを確認してみる。
ここで、
また、f(x)は密度関数であるから
したがって、
である。
密度関数f(x) に対する平均値の周りの2次のモーメントを、分散という。
・・・(B-7)
分散は、よく利用されるモーメントであるので決められた記号2で表す。
は、標準偏差という。
一般に1次から4次までのモーメントが基本的で重要である。それらをそれぞれ、1、2、3、4と記号を付ければ、
1は、母平均、2は母分散、3は母歪度(わいど: ヒズミとも呼ばれる)、4は母尖度(せんど: トガリとも呼ばれる)を表現する。
−> 積率母関数を参照