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Laboーcolumn
臨床検査技師の将来の業務を考える
第72回日本医学検査学会が5月20, 21日の両日、群馬県高崎市のGメッセ群馬と高崎芸術劇場で開かれました。Gメッセ群馬は、新型コロナウイルスの大規模ワクチン接種が行われた会場で、臨床検査技師も打ち手となって県民約12万人に接種しました。学会はオンデマンド配信が用意されたにもかかわらず、多くの参加者でにぎわいました。学会プログラムには、日本臨床衛生検査技師会 宮島喜文会長の基調講演、井田伸一氏の学会長講演、臨床検査各領域の講演、群馬交響楽団の演奏や元プロ野球選手の斎藤祐樹氏の公開企画などがありました。
さて来年4月は、診療報酬と介護報酬の同時改定が行われるほか、第8次医療計画が始まります。さらに医師の時間外労働の上限規制が適用され、臨床検査技師もタスクシフト/シェアへの対応が求められます。医療計画により、2015年の病床125万1000床から10年間で6万床の削減が決まりました。2021年時点で病床が121万床に削減され、おおむね達成できる見込みです。しかし、急性期の病床比率が高く、回復期への移行が進んでいません。来年の診療報酬改定で回復期病床への転換を促す取り組みが予想されます。病床転換が進むと、臨床検査への影響は必至となることから、臨床検査技師・臨床検査室の将来を考える取り組みが求められます。
厚生労働省は「医療専門職の実態把握に関する研究(令和3年度)」を実施、本学会でも報告されました。臨床検査技師の就業者数は2053年に向けて増加するものの、検査数は2027年をピークに以降減少することが見込まれています。この研究の報告とは異なりますが、最近、薬剤師の団体が静脈採血を、理学療法士の団体が超音波検査を行いたいという要望がでています。個人的には、医療機関で行われる抗がん剤の注射は、管理、調製を含めて薬剤師が行うべきと考えております。また、理学療法士を養成する大学の一部で、カリキュラムに超音波検査が入るようになりました。タスクシフト/シェアにより臨床検査技師の業務は増えるものの、臨床検査業務に他職種が参入することが見込まれます。
このような中で、日臨技は2040年に向けた未来構想を作成中であることを本学会で発表しました。人工知能や情報通信技術の普及が目覚ましいことから、未来に向けた変革の道標を作ることになりました。今後、「テクノロジー」「人財」「働き方」の側面から検討し、来年4月から事業を始める予定です。これまで臨床検査技師は、検査室で精確、迅速に検査を行って参りました。病院の経営環境が厳しい中で、コスト削減にも対応が求められます。
今年の日本医学検査学会を取材するにあたり、技師の業務領域を拡大するためには、臨床医や病院事務側とのコミュケーションを図ることで、日常業務の理解を深めてもらい、新たな業務の可能性を探ることも重要です。コロナの影響が落ち着いたことから、今後一気に業界活動が動き出すのではないかと感じました。
2023.05.26