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検査室支援情報

Laboーcolumn 小林 利康(医療ライター)

新型コロナウイルス感染症の5類移行で思うこと

新型コロナウイルス感染症は、現在、感染症法上の2類相当ですが、5月8日から5類に変わります。最近の感染状況は、1月上旬にピークとなり、その後減少傾向となっています。厚生労働省によると2月12日現在、国内の累計陽性者数は3,295万人、重症者数は291人、死亡者数137人で、累計死亡者数は7万695人になっています。

季節性インフルエンザと同じ5類になることで、いままで発熱外来で受診していた患者は、幅広い医療機関で受診できるようになります。感染者の全数把握が廃止され、定点把握という決められた医療機関からの報告をもとに、国立感染症研究所(感染研)が週1回、感染状況を公表することになる見通しです。行政による行動制限が撤廃され、マスクの着用についても3月13日から緩和されることになりました。すでに屋外でマスクの着用は原則不要となっています。厚生労働省の見解として、今後、通勤ラッシュ時など、混雑した電車やバスに乗車する時などは着用が推奨されるものの、基本的に個人の判断にゆだねられるとしています。

新型コロナウイルスの感染者数は、これまで夏と冬にピークを迎え、春と秋に谷を形成していました。連休など人々の外出が増えると一時的に感染者数が増加することがありました。最近のピークは、2022年2月上旬と8月中旬、2023年1月上旬です。ピーク時には、受診可能な医療機関に患者が集中し、検査はおろか救急車による搬送も困難な状況になりました。ピークを過ぎると、次のピークに向けた対策が望まれたものの、医療機関の混乱は繰り返し起こりました。

感染研の定点把握は、季節性インフルエンザの場合、全国約5,000か所の医療機関で毎週月曜日から日曜日までの感染者数を集計し、翌週の火曜日(9日後)に発表します。例えば2月6日(月)から12日(日)までの感染状況は21日(火)に発表します。今後、新型コロナウイルスも季節性インフルエンザと同様な方法で集計・公表されると、発生状況の把握がかなり遅くなります。

季節性インフルエンザは、感染すると発熱などの症状がみられ、感染したことが分かりやすいのが一般的です。一方、新型コロナウイルスは、無症候で感染が拡大することもあることから、身近に感染者がいた場合や健康に不安がある方を対象に、いつでもPCRなどの遺伝子検査や抗原定性検査ができる体制が望まれます。

季節性インフルエンザの流行は地域に偏りがみられます。新型コロナウイルスもどこで流行しているかが分からないと対策は取りにくいでしょう。個人で的確な判断が取れるように、是非とも市町村単位で、迅速に感染状況が分かる体制を構築していただきたい。それによって住民は、いつどのようなところでマスクをつけるのか、検査を受けるタイミングを自身で判断することができ、効果的な感染対策につながるのではないかと思います。

2023.02.13