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検査室支援情報

Laboーcolumn 小林 利康(医療ライター)

臨床検査データの意義が一層注目される時代に

臨床検査を含む医療データの活用に関心が高まっている。そのひとつが厚生労働省のデータヘルス集中改革プランである。データヘルス集中改革プランとは、2020年の夏から2022年夏までの2年間で、集中して実行すべき3つのACTIONについて具体的な論点や工程等を整理したものである。現在はマイナンバーカードに保険証機能を持たせ、医療機関や薬局で自身の医療データが照会できるシステムが普及しつつある。医療機関・薬局では端末の設置が進んでいる。特定健診の情報が見られるほか、レセプト記載の薬剤情報、電子処方箋、手術や移植、医療機関名などの情報が順次整備され、将来的には、検体検査の一部や薬剤アレルギー歴などの情報も加わる。

本人の保健医療情報を自身が活用して予防・健康づくりに役立てるとともに、医療や介護現場での活用を図ることが目的である。診療中の患者が他の医療機関でどのような治療を受けたか既往歴や受診歴を知ることで、診療の精度が上がり、検査や投薬の重複が防げるのではといった期待がある。

もうひとつの取り組みは、内閣府健康・医療戦略推進事務局が進めている次世代医療基盤法だ。この法律は、カルテ等の個人の医療情報を匿名加工し、医療分野の研究開発に活用することを目的に作られた。法律は2018年5月に施行され、5年後の2023年に見直すことが規定されている。検討ワーキンググループが設置され、事業の運営状況や課題・方策が検討されている。

すでに公的なデータベース(DB)間において、2020年にレセプト情報・特定健診等情報DB(NDB)と介護DBが、2022年4月にDPCDBとNDB・介護DBの連結解析がそれぞれ始まった。これ以外にも全国がん登録DB、指定難病患者・小児慢性特定疾病児童等DB、MID-NETなども連結解析の可能性について検討されている。今後、認定事業者が保有するDBとの連結解析や法的・技術的課題について検討が進められる。

一方、厚生労働省は、2022年4月の診療報酬改定において電子カルテ情報等の標準化を進めた。具体的には、各社の電子カルテにHL7 FHIR規格でのデータ・情報の交換ができる基本共通機能をパッケージ化し、更新・機能拡張することを求めている。

国民一人一人が医療情報を提供することで、自身の予防・健康づくりに役立てるとともに疾病メカニズムの解明や新たな医薬品・医療機器の開発につながる可能性がある。データヘルス改革の進展、次世代医療基盤法において、臨床検査情報がますます重要になり、個別項目の持つ臨床的意義が一層重要になると思われる。

2022.08.16