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検査室支援情報
Laboーcolumn
臨床検査データの標準化、業界挙げての対応が重要に
2022年4月の診療報酬改定により、診療録管理体制加算を算定する医療機関に対して医療情報交換の次世代標準フレームワークである「HL7 FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)」の導入状況について報告を求めている。臨床検査データの標準化についても考える機会になることを期待したい。
診療録管理体制加算は、適切な診療記録の管理が行われていることを診療報酬で評価するもので、患者に対して診療情報を提供している医療機関が入院初日に算定できる。HL7 FHIRは、コンピューター間で医療情報のデータ連携を標準化するための国際規格。
厚生労働省によると、2017年時点で電子カルテが導入されていない医療機関は、200床未満の施設(クリニックを含む)で約6割にものぼる。このため電子カルテの導入を進めるために、標準規格(HL7 FHIR)を標準パッケージとして導入推進を図るとともに、中小規模医療機関を対象にした医療情報化支援基金の充実が必要としている。
一方、臨床検査データの標準化は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が進める医療情報データベース基盤整備事業(MID-NET)において課題となった。MID-NETは、全国で10の拠点、1,000万人規模のデータ収集を目標にしているが、標準化されていない検査項目の対応に苦慮していると聞く。
また、厚生労働省は、医療機関間の連携を進めるために地域医療連携推進法人制度を2017年から実施しており、今年1月1日現在で30法人が認定された。ここでは医療機関間で電子カルテを共用するなどの取り組みが進められている。
さらに厚生労働省は、データヘルス改革の一環としてマイナポータルサイトの充実を図っている。パーソナルヘルスレコード(PHR)として特定健診などの情報を収集し、将来はがん検診や医療機関の臨床検査データも取り込む予定となっている。これらどの事業を進めるためにも臨床検査データの標準化は重要になる。
厚生労働省は、健康・医療・介護情報利活用検討会の下部組織として、全国的な医療情報ネットワークの基盤に関する議論を行うワーキンググループを2021年11月に設置した。ここでは、データヘルス改革に関する工程表に従って、医療情報ネットワークの基盤のあり方や技術的な要件について検討が行われた。2022年1月7日の第3回目の会合では、電子カルテの標準パッケージ機能として、HL7 FHIR規格に準拠した文書の入出力、さらに文書のデータ出力時に含まれる医療情報(傷病名、検査、処方)には、厚労省標準規格等のコードやマスターを付与することを求めている。臨床検査は、標準項目コードであるJLAC10、またはJLAC11の導入を挙げている。
2018年12月に施行された改正医療法は、医療機関内で行われる検体検査について品質・精度の確保を求めている。現在も測定法の違いなどにより、医療機関間で検査データに互換性がない項目があることから、今後、業界を挙げた標準化の取り組みが必要と思われる。
2022.04.14