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Lab Column
赤字病院割合が増加、次回改定で大幅なアップを要望
医療機関の経営環境が深刻な状況になっている。2025年3月、日本病院会など6つの病院団体は「2024年度診療報酬改定後の病院経営状況」について調査結果をまとめ、2025年度診療報酬は「物価・賃金の上昇に適切に対応できる改定」を要望した。調査は2025年1月23日から2月12日にかけて実施、調査対象5,901病院に対して1,816病院(30.8%)が回答した。
2024年の診療報酬改定後、病床利用率は上昇傾向にあるものの、医業利益率、経常利益率は悪化傾向となった。具体的に医業利益率は23年のマイナス5.2%からマイナス6.0%、経常利益率もマイナス1.0%からマイナス3.3%となった。医業利益の赤字病院割合は23年の64.8%から69.0%に増加、経常利益の赤字病院割合も50.8%から61.2%に拡大した。報告では、「病院は今、危機的な状況となっている」「地域医療は崩壊寸前」と訴え、このままではある日突然、病院がなくなることを危惧した。
一方、中央社会保険医療協議会(中医協)は2025年4月、2026年度診療報酬改定に向けた議論を本格化させた。厚生労働省は「医療機関を取り巻く状況」についてまとめ、人件費、医薬品費、医療材料費などのコストがいずれも上昇していることを示した。日本の人口は減少局面を迎え、高齢化率が上昇している。国民医療費は全体として増加傾向を示し、1日当たりの医療費は入院・外来ともに増加していた。しかし、患者数は2020年に大きく減少し、外来は増加傾向を示しているものの、入院は2021年以降も減少している。病院の病床利用率は2019年の80.5%をピークに、20年77.0%、21年76.1%、22年75.2%、23年75.6%と底ばい状態が続いている。
病院費用について2018年度と23年度を比較すると、人件費、医薬品費、医療材料費、委託費、水道光熱費など軒並み2ケタの伸びとなった。診療報酬改定は、2020年度0.55%、22年度0.43%、24年度0.88%といずれも微増となったが、医療機関の収益を高めるために26年度改定は大幅な上昇を望みたいところ。しかし、政府は社会保障費の抑制を進めており、どこまで上昇できるか見極めにくい。
さて、病院経営の厳しさは臨床検査室にも影響が出ることは必至である。病院内の自前検査は、人件費、機器・試薬代、保守費、水道光熱費といった運営コスト以外に、精確・迅速な報告で臨床を支援するといったサービスが重要になる。安易なコスト削減で医療の質を落としてはならない。臨床検査室にとって、コスト低減とサービス向上という相反する取り組みを、今後も真摯に進めていかなければならない。
2025.06.05