SOLUTION

検査室支援情報

Laboーcolumn 小林 利康(医療ライター)

10月以降、医療DX推進体制整備加算を見直しへ

医療DXの更なる推進を進めている厚生労働省は、2024年6月の診療報酬改定で医療DX推進体制整備加算、医療情報取得加算を新設した。しかし、10月以降にこれらの加算を見直す。医療DX推進体制整備加算は、マイナ保険証による診療情報・薬剤情報を診察室等での活用を促すとともに、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスの整備を目的としている。

医療DX推進体制整備加算には施設基準が設けられている。10月の改定でマイナ保険証の利用率を規定したものの、当初、利用率の数値が明記されていなかった。8月30日の医療保険部会で医科受診者に占めるマイナ保険証を利用した方の割合は、2024年7月現在、全国平均で11.13%であることが明らかになった。

医療DX推進体制整備加算(医科の場合8点)は、原則、3カ月前のレセプトの件数を基にマイナ保険証の利用者数から利用率を算定する。別表に示すように10月以降、加算は3つに分けられ、3点、または2点の増点が可能になる。10月以降も同加算を算定するためにはマイナ保険証の利用率は5%以上が最低ラインになる。

中医協_総-9_6_7_17

図. 医療DX推進体制整備加算の見直し内容(中医協 総-9 6.7.17 から抜粋)

なお、加算1、加算2を算定する場合、マイナポータルの医療情報について、患者からの健康管理に係る相談に応じることが施設基準の要件として追加された。2025年1月以降は、利用率の基準はさらにアップする。2025年4月以降の利用率は、2024年末までに設定される予定である。

医療情報取得加算は2024年6月の診療報酬改定で新設され、初診や再診、マイナ保険証の有無により、保険点数は1~3点の加算ができた。しかし、12月以降はすべて1点に引き下げられる。

厚生労働省は2024年5~7月までをマイナ保険証集中取り組み月間と位置づけ、医療機関などに支援金の給付、ポスターの掲示、チラシの配布、カードリーダー増設に伴う資金補助などを行ってきた。同省は、マイナ保険証を利用するメリットについて、過去の診療や特定健診の情報、薬剤情報が参照できることから、診療の質向上が図れるとしている。万一災害で被災された場合もマイナ保険証を携帯していれば、過去の診療情報などが閲覧できる。

厚生労働省によると、マイナンバーカード保有者は国民の74.0%(2024年6月末時点)を占めるという。このうちマイナ保険証の登録はカード保有者の79.4%。しかし、マイナンバーカードを携行する方はカード保有者の約50%にとどまっている。

マイナ保険証を普及するためには、患者に対して診療等の情報を活用する旨の同意を得たうえで、マイナンバーカードを常に携帯し、今後も受診などの際に利用できるメリットを国民に啓発すべきと考える。そのためにはカードという形だけでなく、スマートフォンなど日常的に持ち歩くものに本人確認が可能な仕組みを作ることも重要になろう。メリットよりもデメリットが強調されているようにみえるが、メリットについてもっと広報すべきではないかと感じている。

2024.09.25