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標準型電子カルテの開発と検査項目
医療DXの柱ともいえる電子カルテの普及に向けた取り組みが急ピッチで進んでいる。厚生労働省は、標準型電子カルテの規格を作成し、2025年度中にα版を試行運用させたい考え。この標準型電子カルテの普及に先立ち、主な電子カルテメーカーにおいて、電子カルテ情報共有サービスに対応した規格作りを2024年度中に行い、2025年1月には全国9つの拠点(中核的な病院と連携する病院・診療所)でモデル事業を始める予定。
厚生労働省によると中小規模(主に200床以下)の病院、診療所において、半数近くの施設で電子カルテが導入されていないという。これら医療機関すべてに、遅くても2030年までに電子カルテを稼働させたい考え。システムの導入費用の一部に補助金を用意、2025年4月から順次導入を始める予定。すでに電子カルテが導入されている医療機関でも、健診結果や感染症、検査などの情報をHL7 FHIRに基づいた形式に変換し、電子的に送受信するために必要な改修を2025年度までに実施するように求める。 検査項目に絞れば、臨床検査情報システム(LIS)によるJLAC対応が急務であり、電子カルテではなくLISから直接、検査結果を共有することができれば話は早い。LISが導入されていない施設の課題は残るが、一つの考えになろう。
2024年6月の診療報酬改定では、「医療DX推進体制整備加算」が新設され、マイナ保険証をベースにしたオンライン資格確認、電子処方箋といったサービスの稼働を促している。市中のクリニックや調剤薬局の受付でも、最近、「マイナンバーカードをお持ちですか」といった声かけが行われている。
さて、厚生労働省は2024年6月10日、標準型電子カルテの運用をまとめたシステムベンダー向け技術解説書案を公表した。これによると臨床検査に関連する検査項目は、感染症関連で5項目、検査情報(救急・生活習慣病)として43項目が記載されている。前者は梅毒STS、梅毒TP、HBs、HCV、HIV。後者は生化学的検査が26項目、血液学的検査7項目、尿検査5項目、内分泌学的検査2項目、免疫学的検査3項目。検査情報は、直近3回分の検査項目、検査結果、基準値のほか、ステータスとして中間報告か確定報告かを表示する。項目数が少なすぎるように感じるが、今後、順次追加されていくものと思われる。
検査項目の多くはJCCLSから共有基準範囲が示されている。しかし、上記の43項目にうち血液学的項目にはPT、APTT、Dダイマーといった血液凝固検査が含まれ、標準化されておらず、メーカーや試薬間差が指摘された項目が含まれている。ベンダー向け解説書案には、できるだけ基準範囲の記載を求めているが、測定法や単位が異なる場合、どのように表示するか、検査業界においても十分な議論が必要であろう。
また、感染症項目は、梅毒、B型肝炎、C型肝炎とHIVである。新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験した今、これら5項目だけでいいのか、はしかや風疹などを含めたワクチン接種の有無なども情報として入れるべきではないかと思われる。
2024.06.27