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検査室支援情報

Laboーcolumn 小林 利康(医療ライター)

医療DX、臨床検査データの利活用に期待

2024年に入り、6月には診療報酬改定が行われる。医療DXの推進、医療職の賃上げ、第8次医療計画のスタートを踏まえた改定が盛り込まれており、特に医療DXの推進により、質の高い医療の実現が期待された。

今回の診療報酬改定では医療情報・システム基盤整備体制充実加算が医療情報取得加算に変更され、保険点数も1点下がる。従来の医療情報・システム基盤整備体制充実加算は”患者の情報を収集する体制が整備されていること”が算定要件だったが、新しい医療情報取得加算は”患者の情報を十分に取得していること”が算定要件になっている。減点にはなったが、医療DX推進体制整備加算が新設され、これまで以上に診療情報や薬剤情報を有効に活用していく取り組みが始まる。

さて内閣府から「医療DX推進に関する工程表」が公開され、全国医療情報プラットフォームの構築が進められている。電子カルテ情報共有サービス、標準型電子カルテ、オンライン資格確認、特定健診等データ収集/管理サービスなどの開始時期が明確にされた。

医療DX推進体制整備加算を算定するためには、医療機関でのマイナ保険証の利用率を施設要件に盛り込んでいるほか、電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制、オンライン請求、電子処方箋などの導入が求められている。経過措置が設けられているものもあり、医療DXは、ほぼすべての医療機関で電子カルテが稼働する2030年までに順次進められることになりそうだ。

さらに、医療DXの一環として全国医療情報プラットフォームが作成され、特定健診やカルテ情報が入力される。医療機関で得られた検査データも、患者の同意を得て登録され、マイナポータルにより閲覧することができる。

臨床検査に目をやると、臨床検査データの利活用のためには、HL7 FHIRを軸にした医療情報の標準化が必要で、各医療機関では項目分類コード(JLAC)と施設内のコードを連結するマッピングが求められている。現在、JLACにはJLAC10とJLAC11があり、それぞれメリット、デメリットがあることから、この2つをどのように使っていくかが課題になっており、現時点では両コードを設定できる臨床検査情報システム(LIS)の選定が鍵になると考える。

臨床検査データは、医療機関では主にLISや、PCなどのデータマネージャーに格納され、電子カルテにデータを送信することで使われている。今後、医師は全国医療情報プラットフォームを介して、自施設以外で行われた診療や特定健診などの情報を参照して、診療に活かすことが可能になるだろう。臨床検査データは、LIS上で施設内のコードとJLACをマッピングするだけでなく、豊富な臨床検査関連の情報をより利活用するためにLISと電子カルテ情報共有サービスや全国医療情報プラットフォームを連携する考え方が望ましいのではないか。

今までの保険証は、2024年12月2日に廃止が決まっているが、現時点ではマイナ保険証を使う患者は少なく、医療情報の利活用といった視点ではまだまだ道半ばといえる。しかし、2024年の診療報酬改定から医療DXの推進が予測され、臨床検査データの利活用にも期待される。

2017年の医療法や臨床検査技師等に関する法律の改正により、臨床検査における質の向上・維持が求められた。医療DXにより質が高く、かつ標準化された臨床検査データをもとに、地域や服薬歴などと疾患との関連の研究や、疫学的研究をする機会が増えそうである。医療機関においては、JLAC導入に向けた検討を早急にすべきではないかと感じた。

2024.04.03