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検査の樹―復習から明日の芽を

14-2. Carbapenemases LAMP法プライマー設計の奮闘記

2:プライマー設計の実務作業編

9 DNAシーケンス family 処理データの取り込みと課題

Familyごとに各バリアントのDNAシーケンスデータ全てを揃え、DNAシーケンス Alignment処理を終えた結果、5つのfamilyの中で、blaKPCとblaNDMは非相同塩基配列数が少なくプライマー設計に課題は少ないと思われた。しかし、blaVIM, blaOXA-48-likeおよびblaIMPは、逆に相同塩基配列数が少なく、中でもblaIMPはバリアント間での相同塩基領域が極めて少なく、共通プライマーの設計は困難を来すことが想定された。図4の上段にKPCを下段にはIMPのMultiple Alignment結果の一部を示した。

塩基変異バリアント数および塩基種の例

図4 KPCおよびIMPにおけるDNA Sequence Multiple Alingment結果の一部

Multiple Alignment 処理後は、バリアント間の塩基配列が一致したものには*(アスタリスク)、不一致部分には-(ハイフン)、配列データが無い部分には.(ドット)が付く。(使用ソフトによっては*印のみの場合もある。)
全体的な概要はfamilyごとで大きく異なるが、バリアント間においても、遺伝子全体で1塩基もしくは数塩基のみの塩基変異しか存在しないバリアントから驚くほど塩基変異の多いバリアントの存在など極めてまばらである。また、Alignment処理したデータを個別のfamilyごとにバリアント間の塩基列で比較するとバリアント集団の中で非相同塩基変異が1バリアントだけから、塩基変異が約半数以上のバリアントの塩基列に存在するなど多様である。また、塩基変異もAがGへの変異など1塩基のみへの変異から、AがC, G, Tなどと複雑に変異したものを含むため「-」マークの塩基変異の実態は多様である。さらに、「-」が付いた全体の配列領域の大半を数種のバリアントのみが占めているケースもある。例として、blaIMPのIMP-1~IMP-10 Alignmentの一部分を図5に示した。

Multiple DNA sequence alignment(IMP-1~IMP-10)の塩基列におけるIMP-1との塩基変異バリアント数および塩基種の例

図5 Multiple DNA sequence alignment(IMP-1~IMP-10)の塩基列におけるIMP-1との
塩基変異バリアント数および塩基種の例

このことは、後の課題となるが、高塩基変異群の遺伝子集団のプライマー設計では、どのバリアントの塩基配列をベースとするかは極めて重要となる。また、Alignment結果による「-」のマークも場合によっては「*」へ任意に変換した方がプライマー設計上からは得策となる場合もある。

このような課題は別として、最初はプライマー作成のベースとなるバリアントの選別とDNAシーケンスを Alignment処理したデータ「*-.」マークをLAMPプライマー作成ソフトに正しく入力することである。Alingment解析ソフトによっては、処理後のバリアントの上下の順番が必ずしも当初に並べた順番通りではなく、系統的な類似性で並べ替えられることが多い。PrimerExplorerでは、最上段の塩基配列データを塩基配列ベースとして取り込む。従ってAlignmentの結果、ベースとするバリアントシーケンスが最上段に位置している場合はそのまま保存できるが、そうでない場合はベースとするバリアントシーケンスを最上段に移動させる、もしくはプライマー設計の基本塩基配列とするバリアントシーケンスより上段のシーケンスデータを削除する。
Alignmentの解析結果は、Summaryを除いてCLUSTAL 2.1 multiple sequence Alignmentの結果を全てダウンロードし、WordPadにテキストドキュメントでファイルする。しかし、そのまま保存すると、文字サイズが大きく文字配列が交錯し、塩基の羅列が分り難い。対応策として、文字サイズを9フォントに落とすときれいに整列する(図6(A))。この場合、PrimerExplorerがそのまま最上段の塩基配列と「*-」のマークとも読み込む(図6(B))。また、PrimerExplorerに読み込ませた後は、読み込み後の*印の位置などに誤りが無いかを確認する。数塩基の誤りであれば誤りの塩基を選択し、Set MutationのNut/Consをクリックすると*→‐に、‐→*に反転する。これは、Alignment結果を読み込んだ場合、もしくはSave targetを読み込んだ場合も同様である。また、塩基数は1塩基のみの選択から、整列した数塩基の同時選択も可能である。例えば、Aligment 処理したバリアントの中で1バリアントのみの塩基変異が配列全体に散在し、プライマー設計が困難な場合などに有効である。また、Aligment作業なしにデータを取り込んだ場合は、全ての塩基配列に*印が付く。この場合、Mutant塩基などに意図的に「‐」印を導入して、独自のプライマー設計を行う場合に有用である。

Multiple  DNA sequence alignment結果(A)をPrimerExplorerに直接読み込ませた結果(B)

図6 Multiple DNA sequence alignment結果(A)をPrimerExplorerに直接読み込ませた結果(B)


10 PrimerExplorerによるプライマー設計の概要と要点

Family別にAlignment処理したシーケンスデータの読み込みを終え、プライマー設計を進める中で各familyの塩基構成は、KPC(866塩基)とNDM(800塩基)はGC rich、VIM(800塩基)はNormal, OXA-48-like(798塩基)とIMP(741塩基)はATリッチと分かった。また、KPCとNDMはDetail Settingsを用いずとも、5セットのプライマーが設計できた。また、Detail Settingsを展開すると1,000セットのプライマーが設計できた。それに対し、OXA-48-like、VIMおよびIMPはDetail Settingsを用いなければプライマー設計できなかった。Detail Settingsにより、Mutation/ConsensusをF1c inner B1c inner以下をチェックすると同時に若干のパラメータ変更によりOXA-48-like(120セット)、VIM(236セット)、IMP(G-1)(1,000セット)、(G-2)(174セット)、(G-3)(677セット)の設計ができた。ただし、VIMバリアントの中でVIM-7のみは、VIM-1-likeとVIM-2-likeに属せず、このバリアントだけの変異塩基が広範囲に渡るためこのfamilyのプライマーからは除外してプライマーを設計した。また、IMPはAlignment結果の相同性と遺伝子の特性からblaIMPを3つのグループに分け設計した。

LAMP法のプライマーは、Tm値、各プライマー領域末端の安定性、GC含量、二次構造と4つの因子が重要であり、これはPCRなど他の遺伝子検査のプライマー設計全般と同様である。設計されたプライマーセット数が多い場合は、『LAMP法プライマー設計のポイントおよびPrimerExplorer V5のご紹介』6)に記載されているTm値、プライマーのGC含量を50~60%とする、F2/B2, F3/B3, LF/LBの3’末端およびF1c/B1cの5’末端の自由エネルギーを-4cal/mol以下とする、などの因子条件を加味し少し厳しく絞り込みながら、プライマーセット数を減らしていく。もしくはイージーモードの活用などがある。
設計プライマーセット数が極端に少ないもしくは設計できないfamilyについては前述の因子条件を逆に緩めながらプライマー設計を試みる。もしくは、塩基配列のプライマー範囲を規定値より広げてみる。さらには、塩基変異個所を各プライマーの5’末端付近さらには中央域へと導入を許諾する(概要欄の□にチェックを入れる(図7))などの因子条件を緩めながら設計を進める。ただし、変異塩基の導入を許諾し、プライマー設計が可能になることとプライマーの実際的な反応性は別問題である。

基変異が多く、プライマー設計できない場合のプライマーサイトへの塩基変異導入の許容

図7 塩基変異が多く、プライマー設計できない場合のプライマーサイトへの塩基変異導入の許容

OXA-48-like, VIM, IMPとも何とかプライマー設計にたどり着いた。プライマー表示は「-」印の塩基は赤で表記されるため、プライマー末端からの塩基数位置の判断は容易である。ここまでの詳細な説明は、ガイド『LAMP法プライマー設計のポイントおよびPrimerExplorer V5のご紹介 』を参照いただきたい。塩基配列のプライマー範囲を規定値より広げる具体例の記載はないが、LAMP法の原理を理解すればさほど難解なことではない。しかし、これらの対策を講じてもblaIMPの網羅的プライマーの設計は困難を極めた。3グループに分けて設計した結果、何とかプライマー設計ができた。しかし、これでも基本とする塩基配列をどのバリアントにするかの課題と数個のバリアントの塩基配列不一致が遺伝子全体をまたぐため、プライマー設計の障壁は課題として残された。

PrimerExplorerにより、基本となる LAMP 法プライマー(FIP, BIP, F3, B3)の設計を終えたら、候補とするプライマーセットを実際の増幅反応により可否を試す。理論上から、多くのプライマーセットを最終的に数セット~7, 8セットに絞り込んだが、このときの課題としては、除外したプライマーセットに有益なプライマーセットが埋もれていないか、選択の基準は正しかったかの疑問が残った点である。設計した全てのプライマーセットを、合成依頼し試すことができれば問題は無いがそこには経済的かつ労力的な問題が発生する。同じ遺伝子を異なるパラメータで設計したプライマー同士をイージーモードで選択できないか、プライマー合成を成功に導く具体的な因子と数値例が欲しいなど、漠然とした願望と心残りを抱きながらもなんとか理論的概念を優先し、各familyから2, 3セットの基本プライマーを選び出し合成を依頼した。

11 基本プライマーセットの決定とループプライマー設計の苦悩

合成プライマーの到着を待ち、反応温度を60℃と63℃と2つの系に設定し、プライマーの有効性を評価した。良好な結果が得られた場合は基本プライマーとして採用した。増幅しない、もしくは90分以内に増幅反応が認められないなど、満足が得られないプライマーセットは破棄した。Family内に基本プライマー候補が見当たらない場合は、候補に挙げた未合成の他のプライマーセットを試す、もしくは再度設計条件を変えて再設計した。

基本プライマーが決定し、さらに反応時間の短縮を求める場合は、決定したLAMP 法プライマーの情報ファイルを用いてループプライマーを設計する。このとき陥った失敗例は、多くのプライマーセットを設計したことにより、基本プライマーセットの設計に目を奪われ、プライマー情報の保存がおろそかとなり検索に難儀したことである。プライマーセットによっては、保存することを忘れたものも出てきた。この場合は、『saveTarget』ファイルを呼び出した後、各プライマー塩基を選択し『Fixed Primer』をクリックしていく。これにより同じプライマーセットが設計されるのでここでプライマーの情報ファイルを得ることができた。このとき、ちょっとしたコツとして、塩基選択の際、改行や塩基配列の10文字一括りを越えて文字を選択する場合、10文字を越え次の塩基をクリックすると10文字一括りを越えたとたんに次の10塩基全てが選択されてしまう。この場合は、Shift + ← or →キーを押しながら塩基を選択する。

10文字クリック

プライマー情報ファイル再構築のもう一つの方法としては、saveTargetファイルとSaveParamsファイルとも入力すると同じプライマーセットが含まれるためセット内から選択して情報を得ることができる。

ループプライマーの設計も基本プライマーセットと同様に実際に検証する必要がある。充分な反応時間の短縮が得られた場合は、ループプライマーとして決定する。効果が得られない場合は、再度ループプライマーの設計をやり直す。このような手順を経てLAMPループプライマーも設計される(図8)。ループプライマーは LAMP法 にとって必要不可欠なものではない。また、基本プライマーセットによっては、ループプライマーが設計できないものやLF, LBのいずれか片方のみしか設計されない場合もある。特に、基本プライマーセット設計の際に、都合によりプライマー間塩基数を変更した場合は注意が必要である。 (滑った安易な判断が…)設計ソフトでループプライマーを設定できない遺伝子でのループプライマーは、目視で設計しようと高を括って設計した。LF:Fはセンス鎖を設計しているためセンス鎖と思い込み設計した(この場合BFは設定できなかった)。プライマーが手元に届き試したが全く効果が無い。狭い自分の見識にこもり、安易な判断で設定したプライマーに自分の力なさを嘆いた。しかし、何とか完成させたいと、再度、LAMP法の基本的増幅機構をたどっているときにLFはセンス鎖の相補鎖、LBはアンチセンス鎖の相補鎖と気付いた。実際に逆鎖を設計したら見事に反応時間の短縮ができた。

LAMP法における一般的遺伝子と高塩基変異群の網羅的プライマー設計での手順

図8 LAMP法における一般的遺伝子と高塩基変異群の網羅的プライマー設計での手順

12 プライマー設計時の苦悩、もしくは分析ごとの検出作業、どちらを選ぶ?

適正なLAMP法プライマーセットを設計するには、設計支援ソフトで得た数多くのプライマーセットの中から経済的かつ労力的な要因を勘案し、数セットのプライマーセットを選択し実際に検証してみるのが得策である。確かに、プライマーの設計作業は経済的要因、設計上の経験的知識、遺伝子増幅プライマーの特性、プライマー設計支援ソフトによる最適パラメータ設定因子および絞り込み条件の適否、標的遺伝子および遺伝子群の性状などの要因による影響を受けるために苦悩が多い。このように、記述すればLAMP法のプライマー設計は、全般において極めて困難との印象を受けるが、前述したように、通常の標的遺伝子では、さほどの苦労無く、比較的容易にプライマー設計ができる。
今回は、高塩基変異群を網羅的に検出するという厳しい条件が加わったため困難さが増長された。このように、プライマー設計の難易性を左右する一番の要因は、標的遺伝子および遺伝子群の特性である。確かに、PCR法と比較するとプライマー設計には労力がかかる。しかし、一旦決定してしまえば、増幅・検出操作は迅速かつ容易である。反面PCR法では、プライマー設計は比較的容易であるが、毎回の分析に増幅バンドや非特異バンドの確認のためのゲル電気泳動、ゲル染色、または、Melting Curve分析もしくはハイブリダイゼーション分析などの必須作業を伴う。従って、どちらを選択するかは各人各様の考えに委ねられる。

13 LAMP法プライマー設計に重要な語彙の説明

以下に LAMP法プライマー設計に重要な語彙を列記した、LAMP法プライマー設計の手引き(PrimerExplorer V5)から抜粋し、一部加筆した。

1) Tm値
Tm値 二本鎖DNAの50%が解離して一本鎖DNAになる温度のこと。
Tm推算式 Nearest-Neigbor 法を基本とする。この方法は、現在最も実測値に近い近似法と言われる。Tm値計算実験条件として、塩濃度やオリゴ濃度影響を受けやすいため、一定条件で算出が望ましいとされている(オリゴ濃度を0.1μM、ナトリウムイオン濃度を50mM、マグネシウムイオン濃度を4mM)。なお、各領域Tm値は、F1cおよびB1c領域で65℃前後(64~66℃)、F2領域、B2領域、F3領域、B3領域で60℃前後(59~61℃)、ループプライマー 65℃前後(64~66℃)に設定する。

2) 各プライマー領域末端安定性
各プライマー領域末端は DNA 合成起点となるため安定性が要求される。F2/B2、F3/B3、LF/LB 3’末端および F1c/B1c 5’末端自由エネルギーが-4kcal/mol 以下になるように設定する。F1c/B1cの5’末端およびF2/B2、F3/B3の3’末端からそれぞれ6塩基のdGを-4kcal/mol以下とする。
F1c 5’末端は複製後に F1 領域 3’末端に相当するため安定性が重要となる。なお、自由エネルギー変化(⊿G)は、生成物自由エネルギーから反応物自由エネルギーを差引いたものである。反応は、自由エネルギー変化(⊿G)が負である方向へ進む。プライマーとターゲット遺伝子アニーリングは平衡反応であり、⊿G が小さければ小さいほどアニーリング反応が進行するこれらを充分に考慮したうえで、塩基変異の多い遺伝子プライマー設計では、プライマーサイトへの塩基変異導入を許諾しながらプライマー設定を進める(図7)。

3) GC含量
プライマーのGC含量は、40~65%程度になるように設計する。50~60%間に設計できれば、比較的良いプライマーが得られる傾向にある。

4) 二次構造
特にInner primerに関しては、極端に二次構造をとらないように設計する。また、プライマーダイマー生成を防ぐためにも、3’末端が相補的にならないように注意が必要である。

5) プライマー間距離
F2領域外側からB2領域外側まで(LAMP 法増幅領域)が120~160塩基になるように設計する。F2領域5’末端からF1領域5’末端まで(ループを形成する部分)40~60 塩基になるように設計する。F2領域とF3領域間距離0~60塩基になるように設計する。ここでは、プライマーの位置関係を考慮しながら任意に拡大可能である。

14 プライマー設計とプライマーセットの保存コード作成

PrimerExplorer V5でLAMPプライマーを作成する際、保存しておくべき情報がある。まずSaveTargetでターゲット領域の塩基配列データとAlignment結果を保存する。次にSaveParamsを保存する。特に高塩基変異群の場合は、パラメータを変更しながらプライマー設計をするため数回のSaveが必要となる。パラメータを適正に変更し、Generateをクリックすると設計されたプライマーセットの数が出る。これをモニターで確認するにはDisplayをクリックする。すると、遺伝子のベースとした全塩基配列とプライマーセットの全プライマー位置と設計された全プライマーセットが塩基配列位置に対応して表示される。また同時に、Alignmentによる不一致塩基は個々のプライマー塩基が赤で示される。画面の保存はSave Listをクリックする。保存List は(PrimerList180327135612)のように12桁の数列で識別される。この場合、1,000のプライマーセットができた場合は1画面100セットで10画面が発生する。
Save ListはListの左端の□の中にチェックを入れ(☑)Confirmをクリックすると選んだプライマーセット各々が画面に表れ、選択した数のプライマーセットとPrimer InformationとSaveが、上段にはOrderキーが出る。Saveは個々のプライマーセットを保存するために必要であり、モニターにprimerRegularPrimer_180327143622_226と12桁の数列を基本とした識別が表記される。Primer Informationは後にループプライマーを設計する場合に必要である。ただし、基本プライマーセットが思わしくなかった場合はいずれも不要になる。保存法としては、保存を選択した後、次に「開く」をクリックすると使用ソフトの選択画面が出る。私は、WordPadにテキストドキュメントで保存している。Primer Informationは、文頭に(例:designID=180328054159 primerID=226と)識別数列が記載され識別される。
また、この画面からは、□にチェックを入れOrderをクリックするとそのまま合成依頼ができる(ただし、事前手続きが必要)。

RegularPrimer_180327143622_227の表示の一例を示した。

RegularPrimer

ループプライマー設計ではPrimer Informationを入力し、ほぼ類似の作業を実行する。 LAMP法のプライマー設計は、基本12桁の数列と付記数列および先頭文字で作業識別される。これは継続的な識別には有用であるが、実際のプライマーセット検証の際においては使用し難い。この数列コードに独自のプライマーセットの系統別コードを付記すると合理的である。特に、同時に多くの遺伝子を設計する場合や、Alignment結果で高塩基変異群の遺伝子では重要である。
これには①遺伝子の大系的略称、②プライマー設計のグループ名(例えばバリアントのグループなど)、③設計施行回数、プライマーセットの選択法と識別(コード)、④ベース塩基配列のバリアント名などをコード化すると、後の検証やプライマーセットの改善・変更に便利である。
Carbapenemase blaIMPを一例とすると、①blaIMP、②grourp1(G-1)③1st easy 1ID4 ④imp-1:〔blaIMP(G-1) 1st easy 1ID4:-imp-1〕となる。さらに、設計日付や簡易コード化などを加味し工夫すると良い。特に、LAMP法 プライマーは同時に5セット以上を設計するため識別コードの系統化は大切である。特に、SaveTarget、SaveParamsおよび各プライマーセットの保存情報およびPrimer Informationの系列化は重要である。

15.Carbapemase familyのバリアントへの網羅的対応をめざしたプライマー設計の限界と課題

いくつかの難題に対処しながらプライマー設計を終え、全般をふり返ると課題も浮かんできた。
第1に、高塩基変異を有するバリアント集団では、プライマー設計においてプライマーのベース塩基配列とするバリアントの選択がある。これにより、プライマーの3’末端域にミスマッチを有するテンプレートバリアントの実際的反応性は微妙である。至適反応時間、至適反応温度、プライマー親和性などが異なるため一概には評価できないが、ミスマッチの位置によっては反応性すらも疑問視される。
第2に、バリアント集団内におけるDNA Aligment処理結果から、同一塩基番号(塩基列)における塩基変異「-」を有するバリアント数がある。バリアント集団内において、塩基変異が1バリアントだけでも80~90%のバリアントにも見られる塩基変異であっても表現は「-」である。このため、1もしくは数個のバリアントの塩基変異が塩基配列全体を覆っている場合は、プライマー設計ができないか、もしくは極めて困難な事態が発生する。塩基不一致導入をプライマーサイトの何処まで許容するか、すなわち、「-」が相対的に適正かの評価が残る。このような孤立した高塩基変異バリアントのCarbapenemase発生頻度および重要性などの情報がデータベースに付記、もしくは情報発信されていれば有り難い。プライマー設計上の対処法としては、高塩基変異の少数バリアントをプライマー設計から除外するのも一策である。
第3に、「-」に含まれるバリアント集団内の変異塩基とその塩基種である。これは、塩基配列のベースとしたバリアントとバリアント集団内の変異塩基種の差異である。ベース塩基G, CがA, Tへの変異、ベース塩基A, TがG, Cへの変異では塩基の位置にもよるが熱量的な計算に差異が生じる。このことは、第1の課題と同様に至適反応時間、至適反応温度、プライマー親和性、塩基変異の位置によっては反応性すらも変わる可能性がある。さらに、バリアント集団内の非相同塩基はベース塩基列Gに対し、A, T, Cのいずれか1塩基種だけへの変異、2塩基種および3塩基種への変異が生じる。これは塩基変異の位置、変異塩基種、変異塩基の数によって実際的な反応性は大きく異なる可能性が考えられる。
このようなプライマー設計における課題は、LAMP法に限ったものではなくPCR法など遺伝子検査のプライマー全般でも同様の課題である。ただ、LAMP法の場合はプライマーの認識サイトが多い分厄介と言える。プライマー設計の塩基配列のベースとするバリアントの塩基配列と分析対象バリアントのミスマッチ個所、すなわちF3/B3、F2/B2、LF/BLプライマーの3’末端、F1c/B1cプライマーの5’末端から数えた塩基数位置(いずれも末端から5~8番目までの塩基変異は重要)のミスマッチ塩基数、さらにはプライマー塩基とミスマッチを、プライマーF3/B3、FIP/BIP、LF/BLいずれのどこに保有するか、もしくは全てに存在するのかにもよる。しかし、これらは総体的に見た場合と各々のバリアントから見た場合とによっても異なる。すなわち、プライマーには3塩基連続した塩基変異が示されているが個々のバリアントでは3塩基連続した塩基変異は無く、1塩基の塩基変異が連なって異なるバリアントに見られることもある。もちろん、これらプライマーの塩基変異対処法としてプライマーに混合塩基を導入する方法も考えられるが変異塩基数が増えるだけプライマーの分子数が減り反応の減弱化が想定される。従って、高変異塩基のバリアント集団の網羅的検出を目的とするプライマーでは設計後、いかに多種の各バリアントを直接反応させその反応性を評価しながらの改良が不可欠である。設計プライマーの理論的可否の検証は通常手法では極めて困難というよりできないと断言した方が適正かもしれない。さらに、理論的特異性を検証するプライマーBLASTサーチを、プライマー設計のどの時点で施行するかも課題の一つである。設計終了後、設計プライマーの選択後およびプライマーの実験検証後などが挙げられ、数量的に絞り込んだ後が合理的で望ましいがLAMP法のプライマーセットは検証数が多いだけに理論上の評価は難しい。

おわりに

これまでの事象を総括すると、理論的な検証と実際的な検証とでは想定する対象の乖離が伺え、その実態は異なるように思える。従って、これらの課題については理論的な最大限の対策を講じるとともに、その実証試験には対象とするバリアント株との反応性を直接検証することが必須と思われる。これには、いかに多種のバリアント株を揃え得るかが課題となる。バリアント株の収集が世界規模的には不可能な場合、最低でも分析者の対象エリアに限定し、頻発バリアント株だけでも直接検証する必要がある。そのため、組織的あるいはエリア限定でもCarbapenemase菌株バンクの設立が必須であり急務である。また、試料は遺伝子検査の特性上、必ずしも生菌株が必要ではないFTAカード(GEヘルスケア・ジャパン社)などによるDNA固着ツールなどの活用は輸送、室温保管上からも有用と思われる12)。同時に、菌株の詳細な分析情報の収集も不可欠である。これら菌株遺伝子バンクなどの組織的な確立は、Carbapenemase遺伝子分析法において最良のプライマー設計に不可欠な要因と言える。

参考文献・web site

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http://englishlands.net/google-translate/
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http://google.tku.ac.jp/others/23/2
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5)
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12)
FTAカードのご紹介(GEヘルスケア・ジャパン社 ウェブサイト)
https://www.gelifesciences.co.jp/whatman/ftacard.html